悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年05月18日(木) 00時00分

ネット世論が突いたPSE法の矛盾——猫の目行政に翻弄される中古品業者読売新聞


音楽家の坂本龍一さんらを発起人に、ネットでPSE法反対の署名約7万5000人分が集まり経産省に提出された。画面は日本シンセサイザープログラマー協会のホームページ

販売額が世界最大のパソコンメーカー、デル社製のノートパソコンのACアダプター底面。日本で販売される製品に関してはPSEマークが付いている。ただし、パソコン本体はPSE法の対象外だ

 認定マークのない一部電化製品の販売を禁止する「電気用品安全法(PSE法)」を巡る混乱は、経済産業省がマークなしの販売も事実上認め、ひとまず収まった形だ。だが、腰の定まらない行政の対応に中古品業者が泣かされる結末となった。

4月に猶予期間が切れた

 「4月から中古の電化製品が買えなくなる?」

 ネット上を突然そんなうわさが飛び交った。1月後半のことだ。きっかけは01年4月に施行されたPSE法。国内で販売される電化製品に対して法令で安全基準を作り、それに適合しない電化製品の製造・販売・輸入を禁止している。安全基準が認められた製品には「PSEマーク」が付けられる。

 規制対象となる電化製品はパソコンやパソコン周辺機器などを除く450品目。品目により法律の施行から実施まで5〜10年の猶予期間があり、この4月から洗濯機や冷蔵庫、テレビ、オーディオ機器、電子楽器、など259品目の猶予期限が切れた。法律の施行から5年間の猶予があった家電品に関しては、全メーカーがこれに対処済みだ。実際、01年以降発売のほぼすべての国産電化製品にはPSEマークが付いている。

 しかし、問題は中古の電化製品だ。00年以前に発売された中古の電化製品にはPSEマークが付いていない。PSE法はこれら中古品の売買も対象となるため、リサイクルショップなどで流通している多くの商品が「販売不可能」になるという事態をもたらした。

 当初は単なるネット上での騒動だったこのPSE法問題が3月に入り、国会をも巻き込む抗議運動にまで高まったのには訳がある。最大の原因は、所管の経産省が「中古の電化製品も規制の対象に含まれる」という方針を示したのが2月だったということだ。なぜか? ある中古AV機器販売店主の嘆きに耳を傾けてもらいたい。

 東京・秋葉原に店を構える「清進商会」。店長の小川進さんは03年に同法の存在を知り、経産省に「電源コードが売れなくなるのでは」と問い合わせた。そのときの回答は「問題なし」だった。ほかの業者も問い合わせており、「今のまま販売して問題ない」という回答を得ていた。

 つまり、経産省がPSE法で中古を含める方針に転換したのはつい最近なのだ。多くの中古業者は2月に突然「4月から、扱っているほとんどの中古品を廃棄してください」と言われたようなものである。これを「寝耳に水」といわずして何という。

 その後、全国の中古業者や音楽家などが展開した反対運動の結果、経産省は4月以降もPSEマークのない商品は「販売後に検査」もしくは「レンタル」扱いとすることで中古販売を実質「容認」した。当面の混乱を避ける苦肉の策だったのだろうが、「販売を前提としている中古品をレンタル扱いで売るのは役所が脱法行為を指南しているようなもの」などという批判も多い。

対象不明確なPC周辺機器

 また、パソコンとパソコンの周辺機器は自主的に安全性を管理する団体があるため、今回のPSE法の対象から外れている。そのため、これまで通りパソコンや周辺機器の中古売買は可能だ。しかし、パソコンの周辺機器の中には、スピーカーなどPSE法の規制対象となる製品も多く含まれ、どこからどこまでがPSE法の対象機器になるのかわからない。PSE法には「これなら売っていい、これはダメ」という明確なガイドラインが全くない。これでは消費者も混乱するばかりだろう。

 清進商会はPSE法に振り回され、事業の大幅縮小を決めた。2人いた従業員は解雇された。「悔しい気持ちでいっぱいです。4月以降も営業はできそうですが、経過を見ないと安心できません」(小川さん)。

 経産省の犯したミスは、取り返しのつかないところまで来ている。(津田大介/2006年4月24日発売「YOMIURI PC」6月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20060518nt07.htm