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2006年05月18日(木) 02時07分

5月18日付・読売社説(2)読売新聞

 [耐震偽装事件]「詐欺に問われた安全軽視商法」

 耐震強度偽装事件は、発覚から半年で、ついに詐欺事件に発展した。極端なコストダウンと安全軽視の商法に走った末の結果である。

 マンションの開発・販売会社「ヒューザー」の小嶋進社長が、詐欺容疑で逮捕された。「木村建設」の木村盛好元社長も再逮捕された。

 小嶋容疑者は神奈川県藤沢市の分譲マンションについて、木村容疑者は奈良市のビジネスホテルについて、それぞれ強度の不足を認識していた。それにもかかわらず、住民やホテルのオーナーに引き渡し、代金をだまし取った疑いだ。

 藤沢市のマンションは、最も弱い部分の強度が、建築基準法が定める耐震基準の15%しかなく、震度5弱の地震でも倒壊の恐れがあるという。奈良市のホテルも、基準の44%しかない。

 法の規定は、あくまで強度の最低基準である。元1級建築士の姉歯秀次容疑者が構造計算書を偽造したのが発端とはいえ、こんな欠陥建物が、よくも建設されて、堂々と販売されたものである。

 小嶋容疑者は国会の参考人質疑で、民間確認検査機関の「イーホームズ」がでたらめな審査をしたためで、非はないと主張していた。木村容疑者も「偽装は知らなかった」と答えていた。

 一生に何度もない、マイホームの購入という人々の夢を踏みにじり、生活を破壊した行為である。

 姉歯容疑者にコストダウンの圧力をかけ、利益優先に走った小嶋容疑者らを詐欺容疑で立件した意義は大きい。建築業界全体への警鐘ともなるだろう。

 逮捕容疑のほかにも、ヒューザーと木村建設は、多くの偽装物件に関与している。「だまされた」と思う感情は、すべての被害者に共通のものだ。

 小嶋容疑者らは、その他の物件では強度不足を知らなかったのか。ホテルの開業指導をした総合経営研究所には責任がないのか。警察は、これらの点についても捜査を尽くしてもらいたい。

 ヒューザーと木村建設は経営が破たんした。両社とも、住宅品質確保法で定められた補償責任をまったく負おうとしなかった。偽装事件は、補償意思・能力の皆無な業者がいることを示した。

 国土交通省は、再発防止に向け、今国会に建築基準法などの改正案を提出している。確認検査が適正かどうかを審査する判定機関の設置や、建築士などの罰則の強化を盛り込んでいる。だが、建築業界などからは、この内容では効果が十分でないとの批判が出ている。

 警察の捜査も踏まえ、さらに建築行政の見直しを進める必要がある。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060517ig91.htm