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ＮＴＴ、ＫＤＤＩ、ソフトバンクの通信大手「３強」の２００６年３月期決算が１２日、出そろった。ＮＴＴは２年連続の減収減益だった一方、ＫＤＤＩとソフトバンクは増収増益だった。ソフトバンクはボーダフォン日本法人の買収で０７年３月期の連結売上高は２・５兆円規模に膨らみ、ＫＤＤＩの３兆円規模に肩を並べる見通し。今後は携帯電話と、ブロードバンドサービスの柱になる「ＩＰ放送」の本格化に向け、「３強」の勢力争いはさらに激化しそうだ。（田中左千夫、清岡央）
■戦国時代ＮＴＴグループ全体の売上高は前期比０・６％減、本業のもうけを示す営業利益も１・７％減と、２年連続の減収減益だった。割安なＩＰ（インターネット・プロトコル）電話の普及によって、東西地域会社の音声通話収入が約２０００億円減少し、それを稼ぎ頭の携帯電話事業で穴埋めしきれなかったためだ。
これに対してａｕは、高性能の第３世代携帯電話で「着うたフル」などのデータ配信サービスを展開して顧客を増やし、売上高を増やした。ボーダフォンは第３世代携帯電話の投入が遅れたため伸び悩んだが、ソフトバンクの孫正義社長は「基地局を（現在の２倍以上の）４万６０００局に増やし、圧倒的につながりやすくする」と買収後の攻勢に自信を示している。決算数字では依然としてＮＴＴグループが圧倒しているが、携帯やＩＰ電話などの成長分野では、力の差は縮まっている。
■番号持ち運び今後の勢力争いの最初の試金石となるのが、今年１０月ごろに始まる携帯電話の「番号持ち運び制度」。契約する携帯会社を変えても携帯電話番号が変わらず、携帯会社の乗り換えが進むことが予想される。番号持ち運び制度を先行導入したデンマークでは、激しい価格競争で撤退に追い込まれた携帯会社も出ている。
ＮＴＴドコモがパケット通信の定額制を拡充するなど、すでに各社は顧客のつなぎ留め策を強化している。ボーダフォンの巨額買収による負担がのしかかるソフトバンクの孫社長も「（他社との競争で通話料などの）価格も重要な要素だ」と値下げを示唆している。携帯電話はほぼ普及しつくしたとされ、今秋からは顧客の奪い合いが本格化しそうだ。
■ＩＰ放送固定電話の世界では、インターネット技術を使い、光ファイバーなどをテレビに接続して番組を楽しむ「ＩＰ放送」の本格化が予想される。視聴者にとっては現在のテレビ放送と同じように、通信回線でテレビ番組を楽しむことができるわけだ。このサービスには、映像などを流すための高速大容量通信が必要になる。ＮＴＴは２０１０年度までに光ファイバー回線を３０００万回線まで増やす計画で「光サービスの中身が充実して顧客が増えれば、回線を引く投資効率も高まる」（和田紀夫社長）と期待する。
ＫＤＤＩも東京電力の光回線を実質的に買い取り、ＩＰ放送などのサービスをさらに強化。ソフトバンクも、ヤフーＢＢ向けにＩＰ放送を拡充させており、ＩＰ放送のコンテンツ（番組内容）次第で通信会社の勝敗を分けそうだ。
通信回線でテレビ番組を流す際には、放送に比べて著作権の許諾処理に手間がかかるが、竹中総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」は、許諾処理を早期に簡素化する方針を打ち出している。インフラと法制度がともに改善されることで、ＩＰ放送は通信会社の新たな顧客争奪戦の焦点になる可能性もある。
通信大手の２００６年３月期連結決算 売上高営業利益税引き後利益 ＮＴＴ（持ち株会社）※１０７，４１１（▼０．６）１１，９０７（▼ １．７）４，９８６（▼２９．８） 東日本２１，２５３（▼２．５）６５９（▼２４．８）５１２（▼１１．８） 西日本２０，２９６（▼３．３）３２０（▼５４．３）３２６（▼２０．４） コミュニケーションズ１１，２７８（ ３．５）６７５（▼ ３．３）３１４（ ２７．８） ドコモ※４７，６５８（▼１．６）８，３２６（ ６．２）６，１０４（▼１８．３） ＫＤＤＩ３０，６０８（ ４．８）２，９６５（ ０．１）１，９０５（▼ ５．０） ソフトバンク１１，０８６（３２．５）６２２（ —— ）５７５（ —— ）単位・億円。億円未満切り捨て。カッコ内は前期比伸び率％。▼は赤字、マイナス。ＮＴＴ東西、コミュニケーションズは単独ベース。※は米国会計基準。ソフトバンクの前期の利益は赤字