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2006年05月13日(土) 08時08分

近鉄、全物件を売却 百周年のSF日本町朝日新聞

(5月12日付『ASAHI USA』より)

 近畿日本鉄道の米国法人アメリカ近鉄興業は4月28日、米国のホテル・流通事業の再編について発表、今月12日付で同社がサンフランシスコの「日本町」に所有する全ての物件を米系の不動産開発業者に売却する。今後は、ロサンゼルス近郊のトーランス市に新たにホテルを建設し、資本をロス周辺に集中させる。日本町の近鉄物件は全体の約4分の3を占めることから、日本町の存亡に関わる売却劇に地元日系社会には動揺が広がった。(冨田康弘)

     ◇    ◇

 売却されるのは、ラディソン都ホテル(客室数218)、ベストウェスティン都イン(同125)、近鉄モール(テナント数27)、都モール(同13)の4物件で、いずれも日本町の中核をなす施設。売却先は3Dインベストメント社(ビバリーヒルズ、ジョージ・ダネシュガー代表)で、南カリフォルニアやハワイを中心に商業ビルやホテルなどを所有、運営する。売却額は明らかにされていない。

 アメリカ近鉄興業の角谷武典社長によると、親会社である近畿日本鉄道から昨年12月に2物件を売却するよう指示があり、その約2カ月後に残りの2物件も売却し日本町から撤退する決定の通知があった。同社はこのほか、ロサンゼルス市内に「都ホテル ロサンゼルス」を所有する。

 新ホテル「都ホテル トーランス」(仮称)は、地上7階建てで客室数は200。総事業費3千万ドル。年内に着工し、08年の開業を目指す。

■揺れた日系社会 日本町存続が焦点

 今年はサンフランシスコ日本町の創立100周年にあたり、これを祝う催しが多数企画されている。4月には39回目となる北加桜祭りが盛大に催されたばかり。売却の動きが明らかになった2月以降、日本町は立地も良いことから、非日系の不動産業者が買収した場合は日本町がなくなるのではないかという危惧が広まり、地元メディアも盛んに取り上げた。

 2月21日には、日本町の維持に賛同するギャバン・ニューサム・サンフランシスコ市長の呼びかけで、角谷社長や日本町を含む5区選出のロス・ミルカリミ市議らを交えた話し合いの場が持たれ、関係者や住民ら約200人が参加した。その後も説明会や住民側の集会などがたびたび行なわれてきた。

 角谷社長は、「撤退は大変残念。売却先の選定では、日本町の存続が一番の条件だった」と語り、3D社が日本町の存続に同意していることを強調した。売却交渉には近鉄の代理人として、日本町や地元日系社会に長く関わってきたミナミ・ルウ・タマキ法律事務所があたった。

 3D社は買収にあたり、施設の名前や内装など「日本」のテーマを維持する、コミュニティーの施設利用は従来どおり優遇する、所有権を15年以内に売却しないなど、日本町保存に関する約20項目の契約を交わした。同事務所のドナルド・タマキ弁護士によると、この契約はサンフランシスコ市と近鉄の2者が履行を強制できる法的権限を持つという。これにより日本町存亡の危機はひとまず回避されたとみる声も多い。

 一方で、「(4施設は)大規模な改装や新たな設備投資が不可欠で、テナント料が上がることは考えられる」(タマキ氏)との指摘もあり、全ての不安材料が払拭されたわけではない。

 紀伊國屋ビルを所有し、近鉄とともに日本町の2大不動産オーナーである紀伊國屋書店の清野眞一サンフランシスコ総支配人は、「漠然とした不安はあるが、急激な変化はないだろう」と今後の見通しについて述べ、「文化的にも商業的にも成り立つよう、書店をアンカーに日本の価値を発信していきたい」と語った。

 また、日本町では映画館「AMCカブキ8」も売りに出され、俳優ロバート・レッドフォード氏が所有するサンダンスシネマ社が3月に買収を表明。「サンダンス・カブキ」と名称を変え、日本色の内装で秋に再オープン予定という。

 サンフランシスコ日本町は、1906年の大地震を機に現在の場所に日系移民が移り住んで形成された北米最古の日本町。近鉄は68年に進出。現在、北米の日本町はこのほか、ロサンゼルスとサンノゼの2都市にある。

http://mytown.asahi.com/usa/news.php?k_id=49000000605130002