悪のニュース記事

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2006年05月13日(土) 08時05分

アスベスト被害団が結成式/高松朝日新聞

 高松市屋島西町でアスベスト(石綿)を使った水道管を製造していた日本エタニットパイプ高松工場(現リゾートソリューション、本社・東京)で働いていた元社員とその遺族28人が、現会社に対して補償金などを求めることを決めた問題で、請求団の結成総会が12日、同市内であった。
 総会では、1回目の交渉を6月9日にするよう会社に申し入れることや、慰謝料として1人当たり3500万円を請求するなど、今後の交渉の進め方や請求団の申し合わせ事項を確認した。また、元社員とその遺族は「会社側に直接アスベスト被害の苦しさを訴え、理解してもらいたい」と弁護団とともに東京の本社に行き、最初の交渉の場に出席することも決めた。
 請求団長の植田常雄さん(85)=同市屋島西町=は「何も知らずに働いて給料はもらったが、命まで取られるとは思っていなかった。国や会社には一言謝ってもらいたい」と訴えた。

 工場で24年間働いた近くの男性(84)は、鼻に通した酸素吸引チューブがないと胸が苦しくて歩けない。この日は、携帯用の酸素タンクが入ったカートをゆっくりと引き、結成総会に出席した。
 工場では、石綿とセメントを混ぜた液をベルトコンベヤーに乗せる作業を担当していた。石綿を手で触り、マスクもしなかった。「危ないもんと知らんから、みんなそうやっとった」。退職して10年ほどたった70歳のころ、胸に苦しさを感じ病院へ行った。半年間入院したが苦しさは続く。「もしかしたら」と、じん肺専門医を訪ねてレントゲン撮影、石綿が原因で肺機能が低下していると分かった。
 「その時はしまったなあ、と思ったよ。でも時間はもどらん」。病院に通い薬を飲み続けたが、症状は徐々に悪化していく。じん肺に続発性気管支炎の合併症が出て、昨年11月から酸素吸引チューブを使い始めた。
 石綿の輸入・製造は禁止されたが、かつて石綿を使用した建物の解体作業はまだ続く。「若いもんが自分みたいな体にならないように、このつらさを伝えんといかん」。そんな思いも込め、請求団に参加した。

 工場近くの木村幸子さん(57)は一昨年の10月に、義父の正さんを86歳で亡くした。正さんは戦前から戦後にかけて通算で2年ほど工場で働いていたという。
 正さんは亡くなる10年くらい前から、息がつまるような苦しみを感じ始めた。いすから立ち上がるのさえつらくなり、食欲も減退した。風邪もよくひくようになった。「病院へ連れて行ってくれんか」。年に5〜6回、入退院を繰り返した。悪性胸膜腫と診断された。
 家族は正さんの病室に代わる代わる泊まった。鼻から酸素を供給する管を取り外して、もがく父。「100歳まで生きる」と言っていたのに、「殺してくれ」「楽にしてくれ」と何度も頼まれた。「体に虫が入ってしもうた。おれの人生はアスベストにやられた」
 幸子さんは「地獄のような苦しみだったんでしょう」とその姿を思い出して涙ぐむ。
 工場の破れた窓ガラスの周りには灰色の粉が降り積もっていたことを覚えている。「とにかく謝ってもらいたいんです」。幸子さんは訴えた。

http://mytown.asahi.com/kagawa/news.php?k_id=38000000605130003