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2006年05月11日(木) 00時00分

音楽はCDよりネットで買う時代に——本格普及を妨げる配信規格の不統一読売新聞

 日本の音楽業界では、CDの売り上げ低下に歯止めがかからない。一方、携帯電話やパソコン向けの音楽配信ビジネスは急成長している。モノ(CD)からオンライン(情報の流れ)へ—。音楽産業は根本的な転換期に突入したようだ。

急増するネット音楽配信

 これは世界的な傾向だ。国際レコード産業連盟(IFPI)によれば、オンライン音楽配信の世界市場は昨年11億ドル(約1300億円)に達した。これは前年の約3倍だ。今やオンライン音楽配信は、レコード会社の収入の約6%を占めている。

 背景には音楽ファンの心理的変化がある。つい数年前までデジタル音楽といえばファイル交換で入手した海賊版とほぼ同じ意味だった。これに対し主要レコード会社が、ファイル交換のユーザーを大量に訴えて、損害賠償を求めた。さらにアメリカの最高裁が昨年6月、ファイル交換業者に対し海賊版被害の賠償責任を負わせる判決を下した。以後、ユーザーも業者もうかつにファイル交換サービスに手を出せなくなった。

 これに追い打ちをかけたのが、ウイルスの恐怖だ。昨今のウィニー被害に見られるように、ファイル交換で入手したコンテンツは危険なウイルスに感染している可能性が高い。たとえタダで音楽や映画を手に入れても、妙なウイルスに感染してしまえば、被害の方が上回ってしまう。

 以上のようにファイル交換のさまざまな危険性が認識されるとともに、携帯電話やアップル社のiTunes Music Store(iTMS)などの配信サービスが立ち上がってきた。音楽家側の意識変化もあり、手ごろな値段で、豊富な楽曲が入手できる。そこで音楽ファンの関心が、こうしたサービスに向けられたのだ。

課題は規格の統一と互換性

 音楽配信の市場は急成長しているが、爆発的な普及までには至っていない。主な障害は、業界全体でオンライン配信の標準規格が存在しないことだ。配信の規格には、音楽のフォーマット(ファイル形式)とDRM(デジタル著作権管理)の2種類がある。現在まで、両者のいずれも音楽業界で統一されていない。このため、例えば業界首位を走るiTMSの音楽はiPodでしか聴けない。逆にiPodでは、マイクロソフトやソニー系の音楽配信サービスは利用できない。

 CDに例えれば、あるレコード会社の商品は、あるオーディオメーカーのプレーヤーでは聴けるが、別メーカーのものでは聴けないのと同じだ。消費者にとって非常に不便だ。したがって、規格の統一か、異なる規格間の互換性が求められている。しかしアップルコンピュータやソニー、マイクロソフトなどが、自発的にそこに向かう可能性は小さい。というのはどの企業も自社の独自規格でユーザーを囲い込み、自社商品の市場拡大を図っているからだ。

 IT企業にとって、製品規格の公開・共有は両刃の剣だ。しかし、成功すれば、かつてのMS・DOS(ウィンドウズの前身)のように、自社規格をデファクトスタンダード(事実上の業界標準)にして、圧倒的な市場シェアを獲得できる。

 これに対しフランスでは3月に、下院の国民議会が「IT企業に対し音楽配信規格の公開・共有を義務付ける」法案を可決した。しかし業界は「政府の介入よりも、市場の競争原理に任せるべき」と反発している。

 かつて70年代末のパソコン黎明期には、アップルが現在と同様の閉鎖的な戦略をとり、最終的にデファクトスタンダードの座をマイクロソフトに奪われた。今後のコンテンツ配信でも、結局は互換性のある規格が標準になると見られている。(小林雅一/2006年4月24日発売「YOMIURI PC」6月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20060511nt03.htm