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2006年05月11日(木) 01時49分

5月11日付・読売社説(1)読売新聞

 [『共謀罪』法案]「懸念の払拭へ慎重な詰めを」

 「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案の国会審議が大詰めを迎えている。

 共謀罪は、テログループや暴力団など組織的な犯罪集団が、犯罪を謀議した計画段階で処罰するものだ。重大犯罪を早期に摘発して「未然防止」することは無論、必要なことである。

 国連総会で2000年に採択された「国際組織犯罪防止条約」は、共謀罪の設置を義務づけている。119か国が批准・締結し、発効している。日本は条約に署名し、与党だけでなく、民主、共産各党も賛成し、国会承認されている。

 共謀罪の問題点は大きく二つある。どんな団体や組織に適用するのか、さらに共謀の「謀議」は、どの範囲で成立を認めるかだ。

 適用対象について、与党の修正案は、暴力団など「犯罪の実行が目的である団体」に限定した。

 民主党の修正案は「組織的犯罪集団」としたうえで、懲役・禁固5年以上の罪に当たり、かつ「国際的犯罪に限る」と厳しい枠をはめた。

 しかし、条約は、「4年以上の懲役・禁固に当たる罪」を対象とし、「国際的犯罪に限定しない」ことを義務づけている。厳しい制約を課した場合、犯罪摘発が遅れ、条約の目指す「未然防止」が期待できなくなる恐れがあるからだ。

 やはり、条約に沿って、「国際標準」で考えるべきではないか。

 「謀議」についても、与党の修正案は謀議だけでなく、現場の下見や凶器の購入資金の準備など実行に向けた「外部的行為」を構成要件にした。

 民主党は「テロの実行日が決まっている」「軍事訓練を行う」など、具体的な「予備行為」が要るとしている。

 余りに厳格な条件を付けたのでは、実効性が薄れかねない。だが、拡大解釈の余地を残し、不当な運用をされることがあってはならない。

 野党側は、労働組合や市民団体などまで適用の対象にされかねない、と懸念する。与党側は、労働団体などの正当な活動は妨げない、などとする再修正案を示したが、政府も、懸念の払拭(ふっしょく)へ、今後の審議を通じて十分な説明が必要だ。

 テロや組織犯罪を国際連携で摘発しようというのが条約の要請であり、改正案の本来の目的だ。日本が、犯罪を阻止する国際的なネットワークの穴になっては国際社会から批判される。

 こうした犯罪の未然防止を図りつつ、その一方で拡大解釈を生まないよう、どう歯止めをかけるのか。国会審議で慎重に詰めていく必要がある。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060510ig90.htm