悪のニュース記事

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2006年05月08日(月) 00時00分

インターネットの先駆け 仏の電話情報端末『ミニテル』  グルノーブル市の老舗ホテルの片隅に、電話とともに置かれたミニテル 東京新聞

 ——一九八二年、ミニテルを国内で初めて導入する時の主要メンバーでしたね。

 「あの時わたしは『これからは電話による音声会話ではなく、情報を直接やりとりする時代が来る』と信じていた。日本はキャプテンシステムを、イギリスはプレステルを、フランスではミニテルの開発を進めていた。そして、われわれはミニテルを八一年に一部地域で実験的に配布し、八二年から本格的な配布を開始した」

 「わたしはこの事業が成立するために必要な要素として、次の三つを考えた。だれもが使いやすいシステムであること、われわれが提供するサービスは電話番号調べだけでコンテンツづくりは民間に任せる、しっかりした料金回収システムをつくる、の三つだ。質の高いサービスは有料で、電話料金の請求書にサービス利用料金を加算した」

 ——ミニテルがフランスで受け入れられた理由は。

 「パソコンは、立ち上げて必要な画面にたどり着くまでいろいろ手順があるが、ミニテルは、電話番号を押し、サービスの名称をキーボードで入力するだけ。この簡単さと利用料金を回収できる経済モデルが確立していたことが成功の理由だ。八五年には、ミニテルで花束を買って恋人に送るなんてこともできた」

 ——なぜフランス以外で採用されなかったのか。

 「アメリカでは、コンピューター産業の発展の妨げになるという理由で採用されなかった。イギリスでは、料金回収のシステムが銀行の領分を侵すということで嫌われた。フランス語という言語の壁もあった」

 ——ミニテルがフランスでのインターネットの普及のじゃまをしたという指摘もある。

 「一九九〇年代以降、インターネットが普及するなかで、情報は無料という考えがあった。質の高い情報にはお金を払わなくてはいけないという、私の考えが産業界に理解してもらえなかった。でも、ミニテルの経済モデルはインターネットでも利用できる。ドコモのiモードはまさにミニテルの経済モデルそのものだ。『ミニテルといういい前例があったから、iモードの開発は簡単だった』と日本の技術者から聞いたことがある」

 ——今でもミニテルを使うことがあるのか。

 「銀行口座の残高確認などはパソコンを使うより簡単なので、今でもミニテルを使う。パソコンにミニテルの機能をインストールしたものがあり、私の秘書は鉄道切符の予約などで使っている。自宅に、もう使われなくなった十五台のミニテルが保管してある。あなたが興味があるというのなら、今日、持ってくればよかったなあ」

<メモ>ミニテル

 モノクロのブラウン管小型テレビとキーボード、モデムなどからなり、一見、20年前のパソコンを思い出させる。電話回線につなぎ、簡単な操作で電話番号調べや飛行機・鉄道チケットの予約、オンラインショッピング、チャットなどができる。電話回線を引いている人ならだれでも、無料でもらえる電話帳の代わりとして、無料で端末がもらえた。ピークの1995年ごろには、約650万台の端末がフランスで使用されていた。

 インターネットが手軽に使えるようになった今、これらの機能はインターネットで簡単にできるため、現在、フランスでミニテルを使う人は急激に減少している。しかし、慣れ親しんでいまだに使っている人もおり、一部の家庭やホテルなどでは健在だ。また、ミニテルの機能をパソコンにインストールして、パソコン上でミニテルを使うということも行われている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20060508/ftu_____dgi_____000.shtml