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2006年05月04日(木) 00時00分

ネット証券せめぎ合いに 東京新聞

 株式市場が活況を呈する中、インターネット証券業界が「戦国時代」に突入しようとしている。証券最大手の野村ホールディングス(HD)の子会社が今月二十八日から営業を開始。他業種からも名乗りが上がる。大手五社を中心に高収益を誇るネット証券業界だが、相次ぐ新規参入によって生き残り競争が激しさを増しそうだ。

  (経済部・松本観史)

 ■脅威

 JR品川駅に近いオフィスビルの一角で、数十人の男女が忙しそうに立ち回っている。入居しているのは野村HD系ネット専業の「ジョインベスト証券」だ。

 同証券のキャッチフレーズは「業界最低水準の手数料」。詳細は開業前に発表する。二〇〇七年三月末までに五十万口座獲得を目指している。これは〇六年三月末の松井証券の口座数(五十一万七千五百二十一)に匹敵する規模だ。先行する大手五社からは「資本市場を知り尽くした本当のプロ。真打ち登場だ」(松井証券の松井道夫社長)、「手数料の最低水準は維持したい」(イー・トレード証券の井土太良社長)といった声が聞こえてくる。

 これまでの野村は、富裕層を中心とした対面営業を重視。ネット取引は対面営業の補完サービスと位置づける独自の取引にこだわってきた。

 「業界のガリバー」が一変した背景には、増え続けるネット取引を無視できなくなった現状がある。日本証券業協会によると、株式委託取引に占めるネット取引の割合は、〇一年度上期の7・3%から〇五年度上期は28・7%へと急拡大している。

 ジョインベスト証券は、社名こそ「野村」を冠しないものの、完全子会社としてグループの支援を受ける。福井正樹社長は「ゼロスタートなのに、ライバルとして扱ってもらえるのはありがたい。新規顧客の開拓などにつとめ、早い時期に大手と肩を並べたい」と謙遜(けんそん)するが、先行五社にとって脅威であることに変わりはない。

 ■魅力

 ジョインベスト証券以外にも、インターネット関連サービス大手GMOインターネットや三菱商事も子会社を通じ、五月から六月にかけて営業を開始する。

 相次ぐ新規参入について大和総研の吉川満・資本市場調査本部長は「ネット証券は設備投資こそ必要だが、対面販売ほどの人材を集めなくても売買手数料を得ることができる。株式市場が活況を呈しており、預金以外の分野での個人資産の陣取り合戦が始まったという側面もある」と分析する。

 ネット大手五社は〇六年三月期決算で収益、利益とも過去最高を記録した。口座数も〇五年三月末の約百七十八万から〇六年三月末は約三百三十五万へと急増している。個人投資家の取り込みに成功している証しで、ビジネスとしての魅力が高まっている。

 ■拍車

 個人投資家の多くは手数料水準に敏感だ。四月からの手数料を大幅値下げした松井証券は、三月の口座開設数が急増した。

 手数料の安さで知られるイー・トレード証券の口座数は一年間で六十万近くも増えた。

 複数のネット証券に口座を持ち、情報提供なども含めたサービス条件が良い証券会社を選んで取引する個人投資家も目立つという。

 ジョインベスト証券や他業種からの参入で生存競争が激しくなれば、手数料引き下げ合戦に拍車がかかる事態が予想される。

 その場合、「ネット証券各社は安定したシステムづくりにも投資が必要。手数料の安さを競う展開になれば、体力のないところが脱落して業界地図が塗り替わる」(国内証券)といった可能性をはらんでいる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060504/mng_____kakushin000.shtml