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2006年05月04日(木) 00時00分

『金利下げればヤミ金増える』ってホント? 東京新聞

 「消費者金融の金利が下がると、ヤミ金融の被害者が増える」−これは本当だろうか? 先月二十一日、金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」は、中間報告として、貸金業者の貸出上限金利の大幅引き下げを打ち出したが、業界側は強硬に反対した。その根拠が「ヤミ金融をはびこらせる結果を招く」という論理だ。しかし、多重債務者救済の現場を取材すると、業界の主張には首をかしげざるを得ない。

  (白井康彦)

 貸金業の金利は、二つの法律で異なる規定がある。出資法の上限金利が年29・2%なのに対し、利息制限法の上限金利は15−20%。貸金業者の大半は両法の中間の「グレーゾーン金利」で融資している。

 中間報告は「利息制限法まで引き下げることが委員の大勢意見」と説明した。この通りの金利規制が実現すると、廃業に追い込まれる業者が続出するのは必至。懇談会でも業界側は反対した。

 その論理は▽大手業者でも金利が下がれば利益が減るので、貸し倒れの損失を減らすために、融資申し込みの際の審査基準を厳しくせざるをえない▽借り入れできない人が増えて、金利の高いヤミ金融を利用する人が急増する▽出資法上限金利が約40%から約29%に下がった二〇〇〇年六月以降にヤミ金融の被害者が急増した−という内容。

 これに対し日本弁護士連合会の代表は「ヤミ金融問題の根本的な原因は、貸金業界が過剰融資して、多重債務者を激増させたこと。問題をすり替えている」「上限金利引き下げ前から、大規模なヤミ金融組織ができていた」と反論した。

     × ×

 業界の過剰融資の実態について、多重債務者救済の市民団体「夜明けの会」(埼玉県桶川市)事務局次長の吉田豊樹さんの体験を紹介しよう。

 吉田さんは以前、銀行や信販、消費者金融など二十社余りから借金し、その返済に困って違法な超高金利のヤミ金融に手を出した。翌年、自己破産したが、自宅にヤミ金融業者のダイレクトメールが届くようになった。

 失業中で生活が困窮していたため再びヤミ金融で借り、暴力的な取り立て電話を受けて、さらに別のヤミ金融業者から借りる自転車操業状態に。一カ月後には借入先が約五十業者になり、家族も猛烈な取り立てを受け、家族や親せきに援助してもらって業者らに一千万円以上も支払った。

 吉田さんは、東京の市民団体「太陽の会」に電話で相談。そこで紹介された夜明けの会でアドバイスを得て解決できた。

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 ヤミ金融被害者の大半は、多重債務者や破産者。消費者金融や信販の六、七社から合計で二百−四百万円ほど借りて行き詰まるのが典型的なパターンだ。

 上限金利が年20%程度に下がると、三社目か四社目で融資を断られるケースが増えそう。しかし、これは多重債務者にとって不幸ではない。市民団体や弁護士会などに相談し特定調停や任意整理といった手続きを使えば、毎月の返済額を減らして解決できるケースが多い。ただ、こうした解決策や相談先はまだまだ知られていない。

 市民団体の相談員らは「借金の総額が少ないうちに相談に来れば解決も早い。啓発が何より重要。正しい情報が広がれば、ヤミ金融がはびこることはない」と強調する。

 夜明けの会では、借金に依存しない心構えなど心理的なアドバイス(クレジットカウンセリング)にも力を入れている。日本ではまだあまり普及していないが、生活習慣の自己点検などを通じ、自分の問題に気付くための手法だ。

 中間報告は、このほか▽円滑な債務整理のための基盤形成▽社会保障との適切な役割分担▽金融経済教育やクレジットカウンセリングの普及▽CM規制−などの対策を示した。これらを着実に進めていけば、業界の論理を否定できそうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060504/ftu_____kur_____001.shtml