悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年05月02日(火) 00時00分

「抜け道」野放し状態読売新聞

自主検査定着が課題

中古品のオークションで、PSEマークのないテレビの品定めをする販売業者ら(4月25日、東京・江戸川区で)

 テレビや冷蔵庫など家電製品(259品目)に安全性を示す「PSEマーク」を義務付けた制度が4月1日にスタートして1か月が経過した。中古品販売業者の抗議を受けた経済産業省が3月下旬、マークのない中古品のレンタル後の無償譲渡を容認するなどしたため、表面上、混乱は見られない。だが、この措置が“抜け道”となって、マークのない中古品の“事実上の販売”がまかり通っているため、制度の形骸(けいがい)化に歯止めをかける対応が求められている。(豊田千秋)

 4月25日、東京・江戸川区の中古品販売のオークション会場。ここでは、PSEマークのないテレビや冷蔵庫が目立つ。経産省が、中古品販売業者対策の一環として、業者間取引を規制の対象外と認めたためだ。

 オークションの運営者は「マークがないと最終的な売値は2〜3割安くなるが、売れないよりはましだ」と胸をなで下ろす。

 しかし、その結果、マークのない中古品が従来同様に、消費者に対しても出回っている。都内で3店舗を展開する、ある業者は「『レンタルという形ですが、販売と同じです』と言って売っている」と話す。レンタル期間を設けず、返却も求めていない。

 こうした実態が野放しなのは、経産省が当面の混乱回避を優先して、「レンタル」の定義を明確にしないまま、レンタル後の無償譲渡を認めたためでもある。

 PSEマークは、製品の漏電検査などを行えば中古品でも取得でき、経産省は自主検査によるマーク取得を推奨している。しかし、中古品販売業者の間に、どこまで自主検査が定着していくのか、懸念もある。

 電子計測器メーカーの菊水電子工業(横浜市)は、検査機器の今年1〜3月の受注が前年同期比2・4倍の約1500件と急増し、納品まで約1か月かかる「特需」が来た状態だ。しかし、注文は「公的機関や大手の中古品販売業者からが中心で、中小業者からはあまりない」(同社)という。

 中小業者向けに経産省が始めた検査機器の無料貸し出しも低調だ。経産省は3月23日から4月27日までに265台を全国約60か所に配備したが、利用は170業者にとどまっている。経産省は、当初は4月中に予定していた400台の追加購入を見合わせた。

 PSE制度の形骸化で、気になるのが消費者への影響だが、今のところ、大きな“実害”はなさそうだ。経産省によると、家電製品の欠陥で漏電による火災などが発生した場合、消費者はマークの有無にかかわらず、製造物責任法などに基づいて、メーカーに対して損害賠償請求の訴えを起こすことができる。マークのない製品を、購入した場合だけでなく、レンタルで所有権が店側にある場合でも、同様に訴えることができる。

 明治大学理工学部長の向殿(むかいどの)政男教授(安全学)は、「販売店は、PSEマークがない製品を消費者に対して分かりやすく表示すべきだ」と指摘する。

 消費者の安全を守るために導入されたPSE制度の実効性を高めるには、「レンタル」の定義を明確にするなどのルールの見直しや、業者の自主検査の実施状況を点検するなど、さらなる対応が求められそうだ。

PSEマーク  製造業者などが漏電を調べる絶縁耐力検査、通電検査などを行い、安全性を確かめて付けるマーク。2001年施行の電気用品安全法で、マークのない家電製品の販売が禁じられた。品目ごとに5、7、10年の猶予期間があり、今年4月から259品目の規制が始まった。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20060502nt03.htm