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2006年05月02日(火) 13時35分

東京・神田の交通博物館、14日に閉館へ朝日新聞

 東京・神田にあるJR東日本の交通博物館が14日、閉館を迎える。現在地に移って4月でちょうど70年。さまざまな乗り物を展示し、幅広い世代に愛されてきたが、老朽化には勝てなかった。ファンや職員に惜しまれつつ、来年10月にさいたま市に開館する「鉄道博物館」にバトンタッチする。

親子連れなどでにぎわう交通博物館=2日午前、東京都千代田区で

鉄道模型の前には、大勢の親子連れが集まった=2日午前、東京都千代田区の交通博物館で

数多くの鉄道車両が展示される「鉄道博物館」のイメージ=JR東日本提供

 新幹線と蒸気機関車の先頭部分が並ぶ交通博物館の玄関はここ数カ月、写真を撮る家族連れでにぎわう。ゴールデンウイークに入ってから、入場者が1日7000人を超えた日もあった。例年の休日の2倍以上の混雑だ。

 この春、東京都台東区の佐々木司さん(66)と訪れた孫の悠人君(4)は、実物の80分の1の列車が行き交う模型鉄道パノラマに喜んだ。佐々木さんは「この子の父親も連れてきました。昔から雰囲気が変わらないのが良かったのですが」。

 交通博物館は36年に神田に移された。

 05年に「花まんま」で直木賞を受賞した足立区育ちの作家朱川湊人(しゅかわ・みなと)さん(43)にとっては、子どもだけで行くことが親に許される貴重な遊び場だった。天井につるされた黄色のヘリコプターが特に鮮烈で、小学2年の時にはスケッチして先生から銀賞をもらった。

 今年2月、取材で久しぶりに訪れた。古い電車や航空機の内部を再現した展示が無性に懐かしかった。「当時は最新の技術だったはず。いつの間にか時代が追い越してしまったんですね」

 28万点の収蔵資料は原則として鉄道博物館が引き継ぐが、航空や船舶の資料はお蔵入りする可能性がある。朱川さんは「別の場所でもぜひ展示してほしい」と願う。

 専任学芸員の佐藤美知男さん(57)は71年に同館に就職した。もともと乗り物好きで「交通の歴史を客観的に眺められるところ」と希望した。

 若手の大事な仕事が模型鉄道の運転だ。自動に見えるが、学芸員が解説しながら手で操作する。追突しないか初めはひやひやした。うまく運転すると、ガラスをたたいて歓声を上げる子もいた。

 資料収集の仕事は思い出深い。江戸時代の嫁入り道具だったかごを寄贈してくれた新潟県の女性は「これで安心してご先祖に報告できる」と言った。歴史を受け継ぐ重みに身が引き締まった。

 乗り物に関する数多くの質問にも答えてきた。

 東北地方の記憶喪失の男性は「出生地を知る手がかりを得たい」と訪ねてきた。子どものころ、街にトロリーバスが走り出した記憶があった。「その時期なら名古屋では」と教えた。後日、その通りだったことがわかった。「乗り物は人生と密接している、といつも感じます」と佐藤さん。

 鉄道博物館はさいたま市大宮区の新幹線高架脇にできる。旧大宮市の誘致運動を受けて、JR東日本が04年に移転を決めた。事業費は約123億円。展示面積は約9500平方メートルで、交通博物館の2倍強に広がる。車両35両を一堂に展示。大半の車両は中に入れる。

 準備に取り組むJR東日本総務部の本間俊浩さん(32)は、5歳のころから交通博物館に通った大の鉄道好きだ。「実物の列車を見ながら、おじいさんが孫に思い出を語れる博物館にしたい」と意気込んでいる。

http://www.asahi.com/life/update/0502/003.html