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2006年04月27日(木) 00時00分

耐震偽装 住民ら『真実知りたい』 東京新聞

 「真実は一体何なのかを知りたい」−。耐震強度偽装事件で元一級建築士の姉歯秀次容疑者(48)らが二十六日に一斉に逮捕されたことに、精神的、経済的に負担を強いられている県内の偽装マンションの被害者たちは、真相究明への思いを募らせた。一方では建て替えや補修が進まず、捜査は進展しても深刻な状況に変わりのないことへの無力感も広がっている。 (金杉貴雄、岸本拓也)

 ▽横 浜

 「悪いことをしていた人たちは裁かれなければいけない。でも、事件の本質は国土交通省の指導や監督が不足していたこと。国の責任をもっと明確にさせてほしい」

 横浜市鶴見区のコンアルマーディオ横濱鶴見の安達稔副理事長(40)は、あらためて訴えた。建て替え案では一世帯三千万円前後を負担しなければならない。負担が千二百万円の補強による耐震改修案も市から示されたが住民の方針は決まっていない。

 同じ鶴見区で補強が必要なマンションに住む女性(50)は「誰が悪く、責任があるのか、真実を知りたい。国や市、政治家たちに責任はないのか。きちんと追及してほしい」と憤る。

 同様に補強が必要な保土ケ谷区のレジーナ和田町エスタシオンは、建築主の都内の販売会社が昨年、建て替え方針を打ち出したが、その後具体案は決まっていない。

 同社が市に示した会社の連絡先電話番号は現在使われておらず、共同の建築主(横浜市南区)の広報担当者は、「販売会社が窓口なので答えられない。連絡先も担当者と連絡がつかず答えられない」としている。

 同マンションの近所の女性(25)は、「地震でマンションが壊れたらうちに崩れてくる。業者やマンション側からは何の連絡もない。地震があったら不安で早く何とかしてほしいが、全く説明のない業者の対応は不誠実だ」と怒りをみせた。

 ▽藤 沢

 耐震強度が最低の15%しかない藤沢市のグランドステージ藤沢(地上十階、地下一階)では、四階以上の部分の解体作業が始まっている。入居していた十五世帯はすでに全員退去。周囲は工事用のフェンスで覆われ、立ち入りできない状態となっている。

 六月下旬から本格的な解体が始まり、一月下旬まで工事は続く。マンション近くの民家に住む主婦(77)は「あれだけ騒がせたのだから、逮捕されるのは当然と思う。ただマンションが残っている限り、いつ地震で倒壊するか不安は消えない」と話していた。

■『罪ない住民 なぜ負担』

 ▽GS川崎大師

 分譲マンション「グランドステージ(GS)川崎大師」(川崎市川崎区)では、入居していた二十三世帯のうち、現在は二世帯が残っているだけ。この日も駐車場には住民のものと思われる乗用車があった。

 「民間施工」による建て替えを検討しているが、購入代金に加え、建て替え代金の“二重ローン”となる住民負担が最大のネック。そのため、姉歯容疑者らの逮捕にも、住民代表平貢秀さん(43)は「逮捕でも、住民の補償を含めた問題解決につながらない。何も悪くない住民だけが負担を強いられるのは不合理」と憤る。「まずは国交省が責任を取り、住民に弁済し国が施工業者から徴収すればいい。支援という言葉を使っている限り期待できず、国が責任逃れしている」と指摘した。

 ▽GS溝の口

 二十三日に全世帯の退去を終えたばかりの「GS溝の口」(同市高津区)の男性住民(34)は「悪いことをやった人間に相応の責任を取らせるということを目指して、捜査してほしい」と述べ、事件の全容解明に期待する。一方で「行政、国としても、事件に対するそれぞれの責任をどう考えるかをきっちりと詰めてほしい」とも話す。

 人けがなくなった同マンション前を通りかかった近くに住む女性(65)は「住んでいる方がどんな思いでいるんだろうと心配していた。これからも大変ですよね」と言葉少なに住民を思いやった。

 ▽GS江 川

 耐震基準を下回り、補強工事が必要とされる「GS江川」(同市川崎区)。補強について国の具体的な支援策は未整備のままであり、男性住民(51)は「逮捕で社会的に問題が解決したと思われることが心配。国交省にはあらためて今回の問題について、責任を明確にしてほしい」と訴える。

 住民代理人の弁護士は「事実関係が明らかになれば、民事手続きも可能になる。江川は(偽装)初期の物件。いつごろから偽装が行われたか知りたいので注目している。詐欺事件にメスを入れる第一歩として意味があり期待したい」と話した。

 ▽川 崎 市

 川崎市内の「姉歯物件」は五件。耐震偽装事件での逮捕者が出たことについて阿部孝夫市長は二十六日の会見で「来るべきものが来たかなという感じ。いろんな形でけじめ、制度の見直しを徹底的にやってもらいたい」と述べた。市が一部物件の確認審査にかかわった問題には「制度の問題で悪意を持ってやったわけではなく、(事件と)性質は違う」とした。

 住民らが逮捕で幕引きを懸念していることには「そういうことになっては困る。個別の責任問題とされてしまえば、被害者の救済はなくなり、制度の問題が解決されない」との考えを示した。

 四月に発足した市耐震偽装問題対策室の高橋健治室長は「逮捕に関係なく、われわれは住民が再び安心して暮らせるように、粛々と仕事を進めるだけ」とした。

 同市内では販売主がヒューザー以外の分譲マンション二物件があるが、マンション名などは未公表。補強対象だが、販売主が市に対して「責任もって対応する」と説明している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20060427/lcl_____kgw_____001.shtml