2006年04月27日(木) 00時00分

耐震偽装事件がこれほどまでに国民的憤激を買ったのは、「遠・… （東京新聞）

　耐震偽装事件がこれほどまでに国民的憤激を買ったのは、「遠・高・狭」の劣悪な住環境からやっと脱出、一生に一度の買い物で手に入れたマイホームが実はインチキで、元も子もなくす恐怖が、決して他人事（ひとごと）に思えなかったからだ▼受験生を抱え、狭い家で家族が角突き合わせる。厳しい仕事に追われる中堅サラリーマンなら、駅に一分でも近く、十平方メートルでも広くて安いマンションがあれば誰だって飛びつく▼姉歯容疑者が設計し、イーホームズが検査、木村建設が施工して、ヒューザーが売った耐震偽装の格安マンションは、外からはわからない構造の鉄筋を減らしてコストを抑える見かけ倒しだった。それを売った利益で、ヒューザー社長は自家用飛行機を乗り回していた。暮れの寒空にローンを抱えたまま立ち退かされたマンション住民が怒るのは無理もない▼二十六日朝、予告付きの全国公開逮捕劇だった。国会の証人喚問や参考人招致で責任を押しつけ合った姉歯容疑者ら八人が警視庁と千葉、神奈川県警の合同捜査本部に一斉逮捕された▼江戸時代の市中引き回しのようなテレビ中継を見せられてもすっきりしないのは、どれも肝心の偽装本件ではなく、名義貸しや粉飾決算、見せかけ増資の別件ばかりだからだ。ヒューザーの小嶋社長や総研の内河所長の名前もなかった。詐欺罪など全容解明にどこまで迫れるか▼偽装の温床となったのは、計算法によって強度判定がいくらでも変わる杜撰（ずさん）なチェックシステムにある。それを容認してきた国交省の責任追及はこれからだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20060427/col_____hissen__000.shtml