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2006年04月19日(水) 00時00分

PCB処理 不安を除くのが先決だ 東京新聞

 強い毒性を含むPCB廃棄物は、二〇一六年までに処理と定められたが、処理施設をめぐるトラブルが続いている。円滑な処理を進めるためには、何より住民の不安を解消するのが大切である。

 PCB(ポリ塩化ビフェニール)といえば、すぐカネミ油症が思い浮かぶ。製造工程で熱媒体に使うPCBの混入した米ぬか油が原因で、西日本を中心に一九六八年、患者約一万三千人といわれた重い食中毒である。異様な発疹(ほっしん)やまぶたのはれなどが特色だ。

 絶縁油、熱媒体などに広く使われたPCBは、これを機に製造、輸入とも禁止され、法律で廃棄物処分の期限も定められた。人体を侵す激しい毒性を考えると、一日も早く無害化処理を急がねばならない。

 だが一方、カネミ油症の記憶を残す多くの国民は、PCBと聞くだけで警戒の念を抱くのも当然だろう。処理施設の建設、操業にトラブルが伴うのも無理もない。

 国の基本計画では北九州市、大阪市、愛知県豊田市、東京都江東区、北海道室蘭市に政府出資の日本環境安全事業会社が拠点的広域処理施設を造り、PCB廃棄物の無害化処理を進める。このうち操業を始めたのは北九州、豊田と東京の三カ所。

 だが豊田の施設は昨年十一月、蒸留槽の圧力計が外れ、PCBを含む液が配管から漏れて気化し、施設外に排出された。中核市の同市は産業廃棄物処理施設、操業の許可権を持ち、会社と環境保全協定も結んでいるが、市民代表を含む安全監視委員会の承諾が得られなければ、再操業を認めない方針である。

 基本計画とは別に、日本車両製造会社が処理事業への参入を企て、愛知県半田市に施設を造った。だが二十六カ所で、同県の設置許可と異なる設備を造ったことがわかり、同市議会から「社会的責任が欠如した企業」と厳しく問責されている。

 機器が簡単に壊れたのは、施設のもっと重要な部分にも欠陥が隠れているのでは、との疑いを呼ぶ。設備変更も、所定の手続きと住民への説明なく勝手に行えば、企業への不信を強めるだけだ。

 古くは四日市から最近のフェロシルト問題まで、わが国の公害の歴史では、国民の企業に対する視線は時とともに厳しくなっている。PCB廃棄物処理は過去の負の遺産の清算だが、それが逆に国民の不安を高めては元も子もない。

 施設の建設、操業をあせらず、事故やトラブルの技術的、組織的原因は徹底的に究明し、企業側から積極的に住民に情報を公開していくことが、事業を円滑に進める早道だ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060419/col_____sha_____003.shtml