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2006年04月09日(日) 01時00分

<牛乳廃棄>予期せぬ減産で苦境に立つ酪農王国・十勝毎日新聞

 「酪農家や農協、ホクレンなどみんなに問題意識がなかった」——。北海道内の生乳生産量の3割を占める酪農王国・十勝で、ある酪農家がつぶやいた。牛乳の消費低迷を受け、道内の酪農家は3月、1万トンを減産した。ホクレンは集荷済みの約830トンを産業廃棄物として処理し、自主廃棄した酪農家もいる。4月から始まった減産計画は前年度比3%減が目標。足腰の強い酪農を目指し、多額の投資をした大規模酪農家(メガファーム)は予期せぬ減産に苦境に立っている。【仲田力行】
  左右に26頭ずつの乳牛が並ぶ搾乳室。十勝管内新得町の有限会社「友夢(ゆうむ)牧場」社長の湯浅佳春さん(56)は毎日午前4時半と午後4時の2回、社員と牛の乳首に搾乳機をつける。搾り尽くすと別のグループの牛が入れ替わる。約600頭の搾乳が2時間半で終わる。「ミルキングパーラー」と呼ばれる最新鋭のシステムだ。個々の乳牛の期待乳量とその日の乳量、体温、発情状態が一目でわかる。
 友夢牧場は01年、酪農家4軒が出資して設立。7億円でこのシステムを導入した。乳量が増える牛もいるが、湯浅さんの胸中は複雑だ。1日3回の搾乳を2回に減らし、乳の出がいい約50頭を処分した。「お前らのせいで生乳の生産が増えてるんだ」という酪農仲間の冗談交じりの言葉が胸に突き刺さる。
 昨年4月に本格稼働した同管内豊頃町の農業組合法人「Jリード」=井下英透代表(47)=にとって減産はより深刻だ。3月初旬から家畜のふん尿と一緒に生乳を廃棄。月末までの廃棄量は約200トンに達し、乳牛50頭を処分した。
 生産量の割り当ては前年度実績で決まる。Jリードは増産に取り組み、昨年度は計画2000トンを大幅に超える3300トンを生産した。だが、今年度の割り当ては2300トン。300トンしか増えなかった。
  ホクレンによると、昨年4月〜今年3中旬の道内の生乳生産量は前年度比1・8%増の約365万トン。一方で消費量は約4%減った。朝食抜きの生活習慣、学校給食の消費落ち込み、ダイエット志向などが要因とみられる。日本酪農乳業協会が全国1万5000人を対象に昨年実施した調査では、牛乳を飲む人が前年比7%減だったのに対し、豆乳は8%、茶系飲料は4%、スポーツドリンクは11%、ミネラルウオーターは6%増えた。
 消費回復は当面見込めないとみて、道内の農協組合長などで構成する道農協酪農畜産対策本部委員会は昨年12月、生乳の生産量を前年度比3%減とする06〜08年度の減産計画を立てた。生産量を1割減らした酪農家に出荷1リットルにつき4円の調整金を交付する制度を設けた。3割の酪農家が応じれば計画が達成できるはずだったが、応じたのは約1割にとどまった。
 友夢牧場の湯浅さんは「減産に応じた方が経営にはプラス」とこの制度に応じた。Jリードの井下さんは応じるつもりはない。投資した9億円のうち6億5000万円が借入金。3年間で経営は軌道に乗る計画だったが、昨年度は生産調整で5000万円の損失を出した。減産に応じる余裕は全くない。
 「一般企業なら在庫が出る前に新商品を開発したり、消費開拓の努力をする。私たちはそれをしてこなかった。現状では手の打ちようがない」。将来に不安を抱えながら今は突き進むしかない。
(毎日新聞) - 4月9日1時0分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060409-00000001-mai-soci