悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年03月28日(火) 10時34分

オウム 松本被告の控訴棄却 審理再開、極めて厳しく毎日新聞

拡大写真
松本被告が収監されている東京拘置所=27日午後8時18分、松田嘉徳写す    オウム真理教(アーレフに改称)の松本智津夫被告に対する控訴棄却決定が27日出た。初公判から10年、「訴訟能力が認められる」との精神鑑定結果が提出されて約1カ月。不可解な言動ばかりが目立った公判で、「事件の真相」を語ることなく、実質的な審理の道が閉ざされようとしている。【小林直、森本英彦、木戸哲、武本光政】
 ◇事件の真相語らず…「教祖」訴訟能力は認定され
 「実質審理再開の道は、極めて厳しくなった」。あるベテラン裁判官はそう解説する。オウム真理教の事件で起訴された他の被告の弁護を担当した弁護士も「最高裁で上告を棄却されたのとほとんど同じ」と言う。弁護側は「28日に控訴趣意書を出す」としているが、「この控訴趣意書は今後の審理対象とならず、手続きの是非しか主張できない」(別の刑事裁判官)からだ。
 刑事訴訟法によると、高裁の控訴棄却決定に対して不服がある場合、弁護側は決定文の送達日から3日以内に、高裁に異議を申し立てることができる。今回の送達日は27日なので異議申し立ての期限は30日。異議がなければ、最短で31日午前0時に死刑が確定する。
 関係者によると、高裁審理は「異議審」と呼ばれ、弁護側が主張できるのは、「期限までに控訴趣意書を出せなかったことに正当性があり、高裁の棄却決定に違法性がある」との論点に限定される。控訴趣意書の内容となるはずだった「事件を主導していない」など事実認定にかかわる点などは、主張しても審理の対象外だ。
 高裁は異議に理由が無いと判断すれば、異議を棄却する決定を出す。弁護側はさらに、決定文の送達日から5日以内に最高裁に特別抗告できるが、憲法違反か判例違反などごく限られた場合にしか認められない。特別抗告も退けられれば、1審の死刑判決が確定することになる。
 このため、実質的な審理が再開されるのは、最初の手続きである高裁への異議申し立てが認められたケースに事実上限られることになる。【小林直】
 ◇96年、突然「意思疎通」欠く
 松本被告は96年4月の初公判当初、当時の国選弁護団と会話を交わし、5月の破壊活動防止法適用の弁明手続きでも教祖辞任の考えを表明するなどしていた。
 様子が大きく変化したとされるのは、96年10月18日の第13回公判から。法廷では教団元幹部の井上嘉浩被告(36)=2審で死刑判決、上告中=に対する弁護側の反対尋問が行われようとしていた。
 「彼の精神に悪い影響を一切控えていただきたい」。松本被告は突然、意見を陳述して尋問中止を求めた。休廷後に尋問が始まると、顔をしかめ身体を上下に激しく揺すった。拘置所に戻ると「私の弟子は…」と泣き叫びながらチーズを壁に投げつけた。
 その後は大声を出して保護房に収容されることもあり、法廷では不規則発言が続いた。同月28日には接見した主任弁護人に「ウォッ、ウォッ、ウォッ」と数分間にわたって大声を出し続け、接見を拒否するようにもなった。
 拘禁反応をうかがわせる一方、東京拘置所の記録によると、04年2月27日に1審で死刑判決を受け、「なぜなんだ、ちくしょう」と拘置所で叫んだという。
 27日の高裁決定は「井上被告への尋問をきっかけに、被告は弁護人を頼ることは出来ないとの気持ちを強めた。接見に応じても意思疎通を図らない態度を貫き、弁護人に対する不信、非協力の姿勢は現在も何ら変わっていない。1審判決時に見せた訴訟能力を失うに至ったという疑いも生じない」と結論付けた。
 ◇松本被告の”語録”
 松本被告の法廷での発言や拘置所での言動は次の通り。
 「(松本智津夫という)その名前は捨てました」「(職業は)オウム真理教の主宰者です」=96年4月、初公判で
 「後ろ髪を引かれる思いだが、代表及び教祖としての立場を退きたい」「私が殺されるとか、死んだ方がもっといいが、今の環境ではそれは許されない」=96年5月、破壊活動防止法適用の弁明手続きで
 「この事件(地下鉄サリン)につき、すべてを私が背負うことにいたします」「私は全面無罪です」=96年10月、井上嘉浩被告が証人出廷した第13回公判で
 「ここ(法廷)は劇場じゃないか。出してください」=96年11月、第14回公判で
 「先生方と約束どおり、黙秘で戦う。そうすれば20年も裁判が続き、その間修行できる」=96年11月の接見で弁護人に
 「地下鉄サリン事件ですが、弟子たちが起こしたとしても、傷害事件であるというのがポイントです。私はストップを命じた。アイキャン スピーク イングリッシュ ア リトル……」=97年4月、第34回公判で
 「私は完全な無罪です。無実です」=98年1月、第62回公判で意見陳述
 「私ははめられた。もうそろそろ私の人生に幕を閉じたい。お願いだから青酸カリをください」=98年10月、拘置所職員に
 「なぜなんだ、ちくしょう」=04年2月27日、判決後に東京拘置所に戻って
 「大リーグボール3号だ」「甲子園の優勝投手だ」=04年10月20日、拘置所で
 「帰れ、こら」=05年11月、接見した二女らに
 ◇遺伝子スパイ事件など担当…須田裁判長
 松本被告の控訴棄却を決定した須田賢(まさる)裁判長は、新潟県出身の62歳。68年に判事補になり、東京地裁部総括判事や新潟地裁所長などを歴任した。
 東京高裁では、04年3月、米国の遺伝子スパイ事件を巡り、研究資料を盗んだとして経済スパイ法違反に問われた理化学研究所の元研究員について「嫌疑は認められない」として米国への身柄引き渡しを認めなかった。それまで、外国から身柄引き渡しを請求して認められなかったケースはなかった。
 また、埼玉県本庄市の保険金殺人事件で、殺人罪などに問われた八木茂被告(56)=上告中=の同高裁での控訴審では、被告側が申請していた約400件の証拠の大半を採用せず、2回で結審させた。このため、八木被告が裁判の進め方を不服として、05年1月の判決当日に欠席するという異例の事態を招いた。
(毎日新聞) - 3月28日10時34分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060328-00000001-maip-soci