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2006年03月28日(火) 10時34分

オウム 「きちんと審理してほしかった」遺族や被害者ら毎日新聞

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亡くなった夫一正さんの遺影の飾られた仏壇の前で複雑な心境を話す高橋シズヱさん=東京都足立区で27日午後9時40分、石井諭写す    「教祖」死刑の公算が大きくなった。オウム真理教(アーレフに改称)の松本智津夫(麻原彰晃)被告(51)側の控訴を棄却した27日の東京高裁決定。控訴趣意書の提出を巡って1年以上も争ったあげく、弁護側が提出しようとした前日に、高裁は審理を打ち切る決断をした。弁護人を突然解任するなど曲折をたどり、やっと始まった初公判から約10年。「麻原公判」はまたも異例の展開を見せた。遺族らからは、決定を評価する意見の一方で「きちんと審理してほしかった」などの声が聞かれた。【棚部秀行、桐野耕一、若井耕司】
 「死刑確定の見通しができてよかった」。地下鉄サリン事件で、旧営団地下鉄の霞ケ関駅助役だった夫一正さん(当時50歳)を亡くした高橋シズヱさん(59)は東京都足立区の自宅マンションで淡々と語った。松本被告には「何も期待していません。悔しい気持ちしかありません」と11年たった今も気持ちは変わらない。
 夕食の支度をしようとした時、テレビで控訴棄却のニュースが流れた。近くの花屋で白い菊と薄いピンクのユリの花を買い、夫の愛用した制帽を置いた仏壇に供えた。「いつも一緒にいて、同じ気持ちで感じているだろうから、特に報告はしませんでした」
 白いカーディガンの普段着で報道陣に応対した高橋さんは「この裁判にエネルギーを費やして、私の人生も奪われるような気がしていました」と11年を振り返った。しかし、控訴趣意書を期限内に出さなかった弁護団に対しては「引き延ばしの強引なやり方の結果。これで満足でしょう」と声を荒らげてみせた。
 「今後も他の被告の裁判は見続けたい。法廷に被害者がいなくならないように」。自分に言い聞かせるように言葉を締めくくった。
 妻子ともども殺害された坂本堤弁護士の同僚だった岡田尚弁護士は「裁判を通じて真相に迫ってほしいという気持ちがあっただけに、釈然としない」と手続き論による控訴棄却の判断に疑問を投げかけた。しかし「下された結果は結果として受け止め、坂本弁護士の墓前にも報告したい」と続けた。
 信者の脱会を支援したためにサリンで襲撃された滝本太郎弁護士は「弁護人が書類を出さず、被告も1審から裁判妨害を重ね、自ら権利を放棄したのだから、やむを得ない」と高裁の判断を支持。ただ、被害者の立場から、真相究明の最後の機会がなくなる可能性が高いことを悔しがり「死刑執行に立ち会わせてほしい」と話した。
 信者に脱会を説き、猛毒VXガスで襲撃された「オウム真理教家族の会」の永岡弘行会長(67)は「死刑は麻原1人でいいと考えているが、何もしゃべらないまま死刑が確定すれば、神格化され、今教団にいる若い信者のマインドコントロールが解けないままに終わる」と警鐘を鳴らす。さらに「教団幹部は信者に『何も語らず、さすがは尊師だ。君たちも見習え』と教えている。高裁は麻原の人間性を暴くため、ありとあらゆる努力をすべきだった。麻原はしてやったりとほくそ笑んでいるはず」と憤った。
 一方で、松本被告の弁護団の一人は「やりやがった。一番ひどい仕打ちだ……」と声を落とした。28日には控訴趣意書を出し、被告の家族とともに記者会見する準備を進めていた。
 1審で松本被告の弁護を担当した弁護人の一人は「高裁が依頼した鑑定医が『訴訟能力あり』という鑑定書をまとめた段階で、控訴棄却決定はある程度予測していた」。1審の弁護団は96年秋ごろから松本被告と十分接見できない状態になったが、この弁護士は「接見していても訴訟能力があるのかないのか、精神に異常があるのかないのか、正直言って判断がつきかねていた。他の弁護士の多くも同じだったと思う」と語った。
 94年6月の松本サリン事件で二男豊さん(当時23歳)を亡くした静岡県掛川市の主婦、小林房枝さん(63)は「なぜあの事件をあの場所で起こしたのか。一番知りたいことが何も分からないまま裁判が終わる」と割り切れない一方で「これ以上実りのない裁判が長引くとつらい。死刑が確定すれば一つの区切りになる」。月命日の28日、墓前に報告するという。
(毎日新聞) - 3月28日10時34分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060328-00000002-maip-soci