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2006年03月28日(火) 02時41分

麻原被告、控訴棄却決定 死刑確定の公算 趣意書提出されず 東京高裁産経新聞

 オウム真理教の麻原彰晃被告(51)=本名・松本智津夫=の控訴審手続きで、東京高裁(須田●(まさる)裁判長)は二十七日、(1)弁護団が期限内に控訴趣意書を提出しなかった(2)訴訟能力を欠いていない−ことを理由に、麻原被告の控訴棄却を決定した。弁護団は決定を不服として、近く高裁に異議申し立てなどをする方針。今後は主に趣意書を期限内に提出しなかったことの違法性の有無が問題となるとみられるため、決定が覆る可能性は低く、一審・東京地裁の死刑判決が確定する公算が大きくなった。
 麻原被告の裁判は、平成八年四月の初公判から十年、十六年二月の死刑判決から二年余りが経過し、控訴審が一度も開かれなかった。
 麻原被告の控訴審手続きをめぐって、弁護団は「被告との意思疎通が図れない」との理由から、高裁が定めた昨年八月末の期限までに趣意書を提出しなかった。
 これに対し須田裁判長は決定で、「死刑を宣告された被告から実質審理を受ける機会を奪う重大な結果を招くもの。弁護士がその職責を全うするという点からも問題がある」と弁護団の対応を厳しく非難。「提出の遅れが刑事訴訟規則で定められた『やむを得ない事情に基づくもの』と認められない」と判断した。
 さらに弁護団が「被告に訴訟能力はない」と主張した点についても、麻原被告が一審の死刑判決後、東京拘置所で「なぜなんだ、ちくしょう」と大声を発して判決を批判していたことなどを挙げ、「訴訟能力を欠いていない」と結論づけた。
 今回の決定に対し、弁護団は高裁への異議申し立てと最高裁への特別抗告が可能だが、これらは事件審理ではなく、決定に問題があったかだけの審理となる。弁護団は刑事訴訟法を守らず、高裁の再三にわたる趣意書提出要求に応じなかったため、弁護団の主張が認められ審理開始となる可能性は低いとみられる。
 高裁は趣意書の提出期限後、精神科医の西山詮(あきら)氏に麻原被告の精神鑑定を依頼。西山氏は二月二十日、「訴訟能力は失われていない」とする鑑定書を提出していた。
 これに対し、弁護団は「訴訟能力はない」とする六人の精神科医の意見書を高裁に提出。鑑定書への反論書を出していたほか、趣意書を二十八日に提出するとしていた。
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 ■引き延ばし戦術一蹴
 麻原彰晃被告の弁護団は控訴趣意書を二十八日に提出すると表明していたが、東京高裁の控訴棄却の決定はその前日に出された。そこには、これ以上、弁護団の裁判引き延ばし戦術を容認できないとする高裁の強い意思がうかがえる。
 「麻原被告との意思疎通ができず趣意書が書けない」。これまで麻原被告の控訴審手続きは、こう主張する弁護団のペースで進んできた。高裁は弁護団の求めに応じて、一度は趣意書の提出期限を延長。さらに昨年八月末の提出期限を越えても、控訴棄却決定を出そうとはしなかった。
 弁護団は今月二十四日になって方針を転換し、趣意書を二十八日に提出することを表明した。その前日の棄却決定には、裁判の迅速化を求める国民世論が高まる中、「趣意書を受理したら、弁護団に辞任されて裁判が空転する恐れがある」との判断も働いたもようだ。事実、弁護団も辞任の可能性を口にしていた。
 今回、高裁が控訴棄却を決定したことで、公開の法廷で麻原被告の口から真実が語られる機会は失われる可能性が高い。麻原被告は一審で地下鉄サリン事件など、犯罪史上類例のない大事件の動機の核心について、何も語ってこなかった。
 公判を通じて真実の解明を求めた多くの被害者、遺族の心中には複雑なものがあるだろう。同時に、今回の弁護団の対応は麻原被告の「裁判を受ける権利」も奪った。弁護団には死刑廃止運動に熱心な弁護人がおり、趣意書の提出を拒んできた理由も、麻原被告の死刑確定を先延ばしにする戦術だったとみられる。
 麻原被告の訴訟能力は法廷で十分争えたにもかかわらず、刑事訴訟法を無視して公判停止に持ち込もうとした弁護団の責任は重い。一方で、一審終了後二年以上も弁護団に振り回された裁判所も、裁判の迅速化に課題を残した。(半田泰)
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【用語解説】控訴棄却の決定
 刑事訴訟法は、控訴した側が指定された期限までに控訴趣意書を提出しなかった場合や、控訴理由が法律で定める事実誤認や量刑不当などでなかった場合、高裁は決定で控訴棄却しなければならないと規定している。一方、刑事訴訟規則は遅延がやむを得ない事情に基づく場合は、期限後に提出された趣意書を効力あるものと扱うとしている。控訴棄却の決定に対しては上告はできないが、3日以内に高裁に対し異議を申し立てることができる。それが退けられた場合、5日以内に最高裁に特別抗告ができる。
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【用語解説】訴訟能力
 被告自身が刑事裁判で被告としての立場や重要な利害を理解し、ふさわしい防御ができる能力。犯行当時、善悪の判断や行動の制御ができたかどうかの「刑事責任能力」とは別。刑事訴訟法314条は、被告が心神喪失の状態にあるときは、検察官と弁護人の意見を聴いた上で、公判手続きを停止しなければならないと定めている。麻原彰晃被告について、東京高裁は訴訟能力の有無を検討するため、同法43条の事実取り調べ規定に基づき、職権で精神鑑定を実施した。
●=賢の又を忠
(産経新聞) - 3月28日2時41分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060328-00000000-san-soci