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2006年03月27日(月) 00時00分

オウム松本被告の控訴棄却 死刑確定の可能性朝日新聞

 オウム真理教元代表、松本智津夫(麻原彰晃)被告(51)について、控訴審の東京高裁(須田賢裁判長)は27日、一審の死刑判決を不服とした弁護側の控訴を棄却し、裁判の手続きを打ち切る決定をした。「裁判所が決めた期限までに弁護側が控訴趣意書を出さず、かつ被告が訴訟能力を持つことに疑いはない」と理由を述べた。弁護団は直ちに高裁に異議を申し立てる意向を示した。決定が今後の不服申し立て手続きでも覆らなければ、地下鉄、松本両サリン事件など未曽有のテロ事件の首謀者とされ、13の事件で殺人などの罪に問われた「教祖」の公判は、起訴から約11年を経て、控訴審で一度も公判が開かれないまま死刑が確定する。

 ◆なぜ打ち切りか

 刑事訴訟法や刑事訴訟規則は、提出期限までに控訴趣意書が提出されなかった場合、裁判所は「やむを得ない事情」がある時を除いて決定で控訴棄却をしなければならないと定めている。

 弁護団は「被告と意思疎通ができず、趣意書が作成できない」として、期限の昨年8月末までに趣意書を出さなかった。被告の訴訟能力の有無を控訴審最大の争点と位置づける弁護団にとって、趣意書を提出すれば、訴訟能力があることを前提に手続きが進んでしまうことになるからだった。

 弁護団は今月28日に提出すると明らかにしていたが、その前日に決定が出た。決定は「現在直ちに提出したとしても、遅れは『やむを得ない事情に基づくもの』とは認められない」と述べた。

 今回の決定で高裁は、弁護人が趣意書を提出しなかった事情について、真摯(しんし)な努力を最大限尽くしたが完成できなかったなどの理由によるのでなく、既に完成し、提出できる状態なのにあえて提出しなかった、と指摘。「裁判所の鑑定方法について希望がいれられなければ趣意書を提出できない、という考えに固執したためで、不提出は正当化できない」と述べた。

 さらに、「被告から実質審理を受ける機会を奪う重大な結果を招くおそれをもたらすもので、被告の裁判を受ける権利を擁護する使命を持つ弁護士として極めて問題がある」と非難した。

 ◆訴訟能力は

 高裁は続いて被告の訴訟能力を検討。「話す能力があるのに一審の弁護人とほとんど意思疎通を図らないという態度を貫き、控訴審でも弁護人への不信、非協力の姿勢は変わっていない」とした。そのうえで(1)一審公判段階では、訴訟能力を欠くに至ったという疑いは生じない(2)控訴審以降も、東京拘置所での日常生活を見れば、一審公判の終盤と基本的には変わらない(3)高裁が依頼した精神科医の「訴訟能力がある」とした鑑定意見は肯定できる——などから、「訴訟能力に欠けているとは言えない」と判断した。

 ◆今後どうなる

 弁護団は3日以内に異議を申し立てることができる。異議審は、裁判を打ち切った手続きに誤りがないか、決定をした第10刑事部とは別の第11刑事部が非公開で審理する見通しだ。(1)被告に訴訟能力があるかどうか(2)弁護団の行為を理由に被告から高裁での実質審理を受ける機会を奪う不利益を与える今回の決定は、憲法の保障する「裁判を受ける権利」を侵害しないかどうか——などが争点になるとみられる。

 異議が認められれば公判が始まったり、被告の精神状態の治療のために公判停止となったりする可能性がある。退けられた場合、弁護側は最高裁に特別抗告できるが、これが退けられれば、死刑が確定する。一般的には、こうした異議や特別抗告が認められる例は少ない。

http://www.asahi.com/national/update/0327/TKY200603270335.html