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2006年03月16日(木) 00時00分

打倒!2大セキュリティー対策ソフト——中国、ロシア、東欧、北欧から参入続々読売新聞

 個人向けのセキュリティー対策ソフト市場に海外からの新規参入が相次いでいる。2大ソフトが市場の約7割を押さえ、「飽和状態」と見られていたが、昨年秋に中国、ロシア製ソフトが発売されたのに続き、4月にはフィンランド製ソフトが登場する。日本版の開発が比較的容易なことに加え、本国よりも高い利益を見込めることが進出の背景にある。

簡単に崩せない2社の壁

 シマンテック、トレンドマイクロが二分するセキュリティー対策ソフト市場。「2社の壁は厚く、崩すのは難しい」と語るのは2003年7月に、スロバキア製の「NOD32」を発売したキヤノンシステムソリューションズ・セキュリティ企画部の山本昇さん。高いウイルス検出率を誇る製品で自信を持って日本市場に投入したが、思ったほどシェアは伸びなかった。今では中小の企業、SOHOに的を絞る。

 2社の寡占状態が続く中、昨年9月には中国のキングソフトがセキュリティーソフトの無料ネット配布(2年目以降の更新料980円)に踏み切り、2月中旬には配布予定の100万本に達した。「2大ソフトのハードルは高いが、基本機能を持つ安価なソフトにニーズが確実にあることがわかった」と同社広報の綿引恭子さん。

 キングソフトに続き、昨年10月に発売されたのがロシア製の「カスペルスキー」(販売:ライフボート)である。ウイルスの検出率は世界トップレベルで、「知る人ぞ知る」アンチウイルスソフトだ。「10数万本の販売はかなり健闘した方」と同社広報の阿子島力さん。

 そしてこの4月、フィンランドのソフトメーカー「F-SECURE」が、セキュリティー対策ソフトを販売する。同社は日本ではリナックス系のシステムを中心に企業、官公庁に200万ライセンスの納入実績を持つ。だが未開拓の個人ユーザー市場で上位2社の牙城を崩せるのか?

 「(市場に)入り込む余地は十分にあります。企業に比べ個人ユーザーには乗り換えが起きやすいですから。それに品質とサポートには絶対の自信があります」と日本エフ・セキュア代表取締役の渡邊宏さん。

 検出エンジンはシマンテック製品の1つに対し、4つを備える。パソコンへの侵入に悪用されるルートキットの検索機能が日本のソフトで初めて付属。24時間の電話サポートも赤字覚悟だ。価格はトップシェアのシマンテック製品と同程度。発売5年で10%のシェア獲得を目指す。

“おいしい”日本市場

4月に発売予定の総合セキュリティー対策ソフト「F-SECURE インターネットセキュリティ」。イメージキャラクターはムーミン

 それにしても、なぜ海外勢の参入が続くのか。「中国を含め、北欧、東欧、ロシアのウイルス検索技術が高いからです」と渡邊さん。遠隔操作できるボットウイルスを脅しに使う“ボットギャング”やウイルス作成者は、共産体制が崩壊し、軍の技術が民間に流出したロシア、東欧地域に巣くっている。対抗策として、必然的にセキュリティー技術が高まったというのだ。また、フィンランドはリナックスの開発者、リーナス・トーバルスの出身地でIT技術の水準は高い。

 日本版の開発にも手間がかからない。ウイルスを判別するパターンファイルは全世界共通のため、基本機能はそのままで、操作画面だけを日本向けに作り変えればよいからだ。

 日本との物価水準、通貨価値の違いも進出を後押しする。ソフト1本当たりの粗利益は日本で売った方がはるかに大きい。しかも、海賊版が横行する中国やほかのアジア各国に比べて、日本人は律儀に正規料金で購入してくれる。

 「日本はとてもおいしい市場なのです」(渡邊さん)。新規参入が機能の向上、実勢価格の低下につながることを期待したい。(編集部 林宗治/2006年2月24日発売「YOMIURI PC」4月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20060316nt06.htm