悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年03月14日(火) 12時30分

グーグルの「Writely」買収で浮き彫りになったWeb 2.0ブームの実状CNET Japan

 Googleが先ごろ、ウェブベースのワードプロセッサを開発するごく小さな企業を買収したことで、現在増加中のいわゆる「Web 2.0」関連企業が脚光を浴びているが、これらの企業のなかには、生き残りをかけ--あるいはGoogleに次の買収されることをねらって、悪戦苦闘しているところもある。

 Googleは米国時間9日、ウェブベースのワードプロセッサ「Writely」を開発するUpstartleの買収を認めた。

 Upstartleは社員数もごくわずかで、買収規模も大きくはないが、Googleのこの動きには、同社がウェブベースの生産性アプリケーションに関心があることを一段と浮き彫りにする重要な意味がある。これらのオンラインアプリケーションには、圧倒的なシェアを持つMicrosoft Officeに取って代わる可能性があると見られている。

 次の買収対象となるウェブ関連の新興企業を正確に予想するのは難しい。しかし、Googleや、Yahoo、America Online、MicrosoftのMSN事業部などのライバル各社は、製品/サービス補完のために規模の小さなニッチ企業や製品を買収し続ける、というのがアナリストや起業家の予想だ。

 RedMonkアナリストのStephen O'Grady氏は、「一般的なパターンは、大企業が他社に技術革新を任せるというものだ。小さな企業は、大企業に見られる制約の外側で、革新的な技術を機敏に生み出すことができ、そして(大企業に)買収されていく」と述べている。

 今回の買収を受け、Googleの将来に向けた計画をめぐる憶測も再燃し始めた。観測筋によると、Writelyのような文書作成サービスは、オンラインストレージを提供する「GDrive」などのGoogleのプロジェクトを補完できるという。

 同社は、Writelyのサービスによって何を目指すのかを明確にしていない。Writelyは、「Web 2.0」という呼び名でよく一括りにされるサービスの1つだが、こうしたサービスの数はますます増えている。

 正確な定義はないが、Web 2.0はオンラインでのコラボレーションや情報共有を可能にするWebサービスを指すのが一般的だ。静的なウェブページを主体としていた第一世代のサービスとは対照的に、Web 2.0に属する各種のアプリケーションはインタラクティブ性が高く、ネイティブのデスクトップアプリケーションに近い操作性を提供している。

 ウェブアプリケーションの分野では、一般ユーザーや小規模な企業をターゲットにしたWebサービスがここ2年で爆発的に増加している。これらのサービスの多くはまだベータテスト中だが、その分野や企業は以下のように多岐にわたっている。

・オンラインカレンダー:最も活発な動きを見せる分野の1つで、「30 Boxes」「CalendarHub」「Trumba」「Joyent」「Kiko」「Planzo」「Spongecell」などがサービスを提供している。

・生産性アプリケーションスイート:「HyperOffice」「gOffice」「ThinkFree」などが本格的なバンドルアプリケーションを提供している。

・電子メール/コラボレーション:「Goowy」「Zimbra」「Meebo」(ウェブベースのインスタントメッセージング)、および「Jotspot」(Wikiのホスティングサービス)などがある。

・プロジェクト管理/パーソナルオーガナイザー:「AirSet」「37Signals.com」「Zohoplanner」「Stikipad」

・マルチメディア・ソーシャルソフトウェア:人気の高い写真共有サービス「Flickr」や「Riya」(写真検索)、「You Tube」(ビデオ共有)、「Podbop」(楽曲ポッドキャスト)などのサイトがある。

 Web 2.0関連企業が突然ブームになったのはなぜだろうか。この問いに対して、投資家やアナリストらは、技術とビジネスの両面で関連する理由がいくつかあると指摘している。

 まず、高速インターネット回線を利用する人が増え、写真や楽曲、ビデオの共有アプリケーションが無理なく利用できるようになったことが挙げられる。また、Webサービスの基盤ソフトウェアもアップグレードされ、2年前に存在していた技術的な障壁も低くなっているという理由もある。

 さらに、「AJAX(Asynchronous JavaScript + XML)」と呼ばれるプログラミングテクニックを使うウェブ開発者が増えたこともある。AJAXの利用により、サーバからの情報を自動的に更新できるインタラクティブなウェブページやサイトが生まれた。これにより全体的にユーザーエクスペリエンスが改善していると複数の開発者らが指摘している。

 多くのウェブ関連企業は現在、開発者や、場合によってはエンドユーザーが「マッシュアップ」によって異なるウェブサイトの情報を組み合わせられるようにするXMLベースのプログラミングインタフェースを公開している。そして、物件情報の一覧を「Google Maps」や「Virtual Earth」などの地図サービス上に表示できるようにするマッシュアップが人気を集めている。

 Web 2.0関連の新興企業の多さは、小さな企業が比較的素早く、少ない資金で事業を立ち上げられる実態も反映している。アナリストや起業家らによると、生産性の高い開発ツールや少ないオーバーヘッド(比較的低価格のハードウェアやオープンソースソフトウェア)により、事前に多額の出資をしなくても会社を立ち上げることがより現実的になっているという。

 ウェブベースのアプリケーションに採用されるビジネスモデルは、一般に広告やサブスクリプション契約に重点を置いたものとなっている。

 たとえば、オンライン生産性ソフトウェアベンダーのgOfficeでは、Googleの広告によって無償で提供するアプリケーションのコストをまかなっている。一部アナリストは、GoogleがWritelyをGMailのような広告付きのサービスとして提供すると予想している。

 一方、37Signalsなどの企業では、月もしくは年単位のサブスクリプション契約を販売して売上を確保しようとしている。

ドットコム・バブル再来の懸念も

 Web 2.0企業が毎日増え続けているような現状で、一部の人々は、これらの新しいベンチャーが長期的にビジネスを続けていけるのかという点や、これがドットコム・バブルの再燃かどうかという点に疑問を呈している。

 SocialtextのCEO、Ross Mayfield氏は、株式公開やその後の成長よりも、大手企業に早期に買収されることを目的に会社を立ち上げている新興企業があまりにも多いと言う。

 「問題は、早期売却を目的に会社をつくると、目標ははっきりしているが長期的な視野に立てない可能性があるということだ。簡単に言うと、エグジットの選択肢としてIPOを行う可能性が消えたり、予見できないM&Aの機会を失うことになる」と、Mayfield氏は「A Flip/Flop Bubble of Microventures?」というブログの中に記している。

 同じように、Leapfrog Venturesのベンチャーキャピタリスト、Peter Rip氏も、一般ユーザー向けのマッシュアップは興味深くて楽しいものだが、情報共有というアイデアを中心に組み立てられたしっかりとしたビジネスモデルはほとんど見あたらないと述べている。「マッシュアップを興味深い一発芸から本物のビジネスに転換する上では、いくつかの問題があると考えている」(Rip氏のブログ)

 それでも、過去2年間に数多くの小さなウェブ企業が買収されてきている。

 Yahooは、写真共有サイトの「Flickr」や、ウィジェットと呼ばれるデスクトップアプリケーションを開発する「Konfabulator」を買収した。Googleも、「Blogger」や写真共有サービスの「Picasa」、地図サービスの「Keyhole」を含むいくつかの企業を買収してきている。

 RedMonkのO'Grady氏は、今後さらに多くのWeb 2.0企業が買収の対象となる必要があり、それがかなわなければ単純に資金を使い果たしてしまうだろうと見込んでいる。数百人、数千人といった数のユーザーに対してウェブベースのアプリケーションを提供している企業も、それ以上に規模を拡大しようと思えば、各種のリソースや技術的な専門知識が必要になるからだ。

 「幅広いユーザーに向けてウェブアプリケーションを提供するには、それをスケールさせる上での大きな困難を乗り越えなくてはならない」とO'Grady氏はいう。「GoogleやYahooなどには、サービスをスケールさせることに関して、しっかりとしたインフラや十分な経験がある。そうしたインフラや経験と、小さな企業の技術革新を組み合わせれば、非常に興味深いものができるだろう」(同氏)


この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ

関連記事
グーグル、ウェブベースのワープロソフト「Writely」を獲得 - 2006/03/10 10:28
初めての「マッシュアップ」関連カンファレンスが米で開幕へ - 2006/02/20 10:42
ネット企業は技術志向の経営を--梅田望夫氏が語るウェブの進化 - 2006/02/08 14:19
ニッチ市場で身を立てる「Web 2.0」新興企業 - 2006/02/07 12:36
「AJAX」で生まれ変わるデスクトップアプリケーション - 2005/12/12 17:55
次のキラーアプリは「カレンダー」--「When 2.0」カンファレンス開催 - 2005/12/08 11:38

[CNET Japan]
http://japan.cnet.com/
(CNET Japan) - 3月14日12時30分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060314-00000007-cnet-sci