悪のニュース記事

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2006年03月11日(土) 00時00分

ひとつ屋根の他人読売新聞

安い 広い ほどよい刺激

 他人同士が一つ屋根の下で暮らす。たまにイライラもするけれど、安い家賃で広い家に住めるし、ほどよい“刺激”も味わえる——。そんな理由で最近、若者たちに「ルームシェア」が注目されている。インターネットで手軽に相手を探せることや、空き物件をさばきたい貸し手側の思惑も背景にあるようだ。都会の新たなライフスタイルとして定着するのか。現代ルームシェア事情を探ってみた。

 「今月の光熱費がまとまりました」「きょうは外泊します」。玄関の白板に連絡事項が記されている。

 東京・渋谷の3LDKのマンション。コピーライターの菅野夕霧さん(37)(男性)、女性会社員の大淵恵さん(28)、猪瀬三香子さん(25)がルームシェアを始めて2年余りがたつ。

 3人が1部屋ずつ持ち、12畳のリビングや風呂、トイレは共同使用。1か月の家賃は17万円。5万7000円ずつ持ち寄り、余ったお金でトイレットペーパーなどを買う。光熱費や水道代も3等分だ。

 起床や帰宅時間がバラバラで、食事はリビングで勝手に取る。3人が顔をそろえることはめったにない。

 菅野さんが、家電メーカーを退職してフリーになったのは一昨年1月。それまで社宅暮らしで家賃は1万円余だったが、今後は収入が不安定になる。家賃を低く抑えるにはどうすれば……。思案の末、存在だけは知っていたルームシェアを実行しようと考えた。

 早速、インターネットのルームメート募集サイトに登録。〈目標を持って仕事してる人、男女問わず〉などの条件を書き込むと、20歳〜30歳代の男女10人が応募してきた。喫茶店で1人1〜2時間の面談を10人全員と約2か月かけて行った。重視したのは、「家賃を滞納しないか」「同じ場面で笑えるか」など。「結局は直感的に決めました」

 一方の女性陣。「男性とのルームシェアに抵抗はなかった」という大淵さんだが、「私以外の2人が付き合うようになったら、一緒に暮らせるだろうか」との不安を抱いていた。実は、猪瀬さんも同じことを考えていたことが後で分かり、互いに笑い合ったという。

 3人ともルームシェアは初めて。気づいた人がリビングやトイレの掃除をし、他人の部屋に許可なく立ち入らない。予告なしに友人を招待したとして「マナー違反」と声を上げたこともあるが、「安く住んでいるのだから、多少は我慢しないと」と口をそろえる。


共有スペースの台所でくつろぐ菊池さん(左)ら

 「ピアノが置ける広い部屋を借りたかった。防犯上も安心だし」

 そう話すのは、昨春から豊島区内の一軒家で、友人2人を誘ってルームシェアを始めた図書館司書の菊池陽子さん(27)。

 誘いに乗った2人のうち、カナダ留学でルームシェアを体験していた雑誌編集者の遠藤綾子さん(27)は「帰国後も友達と住もうと思っていたのでちょうどよかった」。

 家賃は月に14万8000円で、3等分する。「あまり干渉しないのがコツ」というが、そうはいっても女3人、台所で深夜まで恋愛や仕事の悩みを語り合うことも。「うん、うん」「その選択、正解だよ」。そんな風にうなずかれると、気持ちがすっとする。困った時は距離がぐっと近くなり、支え合う。「それがルームシェアの良さかな」

社宅、独身寮の廃止で注目

 若者のルームシェアについて、賃貸住宅情報雑誌「フォレント」(リクルート)の長井純子編集長(42)は「統計はないが、ここ数年で広がった感がある」と語り、「バブル崩壊後の企業のリストラで、社宅や独身寮が廃止され、行き場を失った若い世代が注目したのでは」と推測する。

 最近は新築物件が供給増となり、「空き部屋にするぐらいなら、ルームシェアでも」と、貸し手側の意識も変化してきたという。

 独立行政法人・都市再生機構(UR)は、一昨年秋から「ハウスシェアリング」を導入。大都市など約300団地を対象に、親族以外の単身者同士による入居契約を制度化した。

 もっとも、URが念頭に置いたのは高齢者の利用だった。「都会の孤独死を防ぎ、助け合って暮らせる仕組みを作りたかった」(担当者)というが、昨春の調査時点での申込件数122件のうち、約8割は40歳未満。「中高年層にはまだ抵抗感があるようだが、今後、団塊世代が退職すれば、利用も増えてくるのでは」と期待する。

 大阪府住宅供給公社も新年度中に、同様の制度を約10団地で導入予定だ。

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