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2006年03月10日(金) 00時00分

開館ラッシュ ミニシアター・ウォーズ読売新聞

渋谷戦線異状あり

シネマGAGA!は完成予想図

 ミニシアターが集中する東京・渋谷で、昨年末から新しい映画館の開館が相次いでいる。東京国際映画祭の開催地・六本木に誕生する映画館と合わせ、開館ラッシュの今を追った。(近藤孝)

 今年1月、周辺にル・シネマやシネ・アミューズなどのミニシアターが集まる渋谷・円山町の一角に、Q—AXビルが開館した。

 渋谷・桜丘町から移転したミニシアターの老舗「ユーロスペース」(スクリーン数は2)、邦画を中心とした名画座「シネマヴェーラ渋谷」(同1)、そして商業施設の企画会社のキュー・アックスが運営する「渋谷Q—AXシネマ」(同2)の3館が同居している。ビル全体で5スクリーンの“シネコン”だ。

 ユーロスペースの北條誠人支配人は「ロングランする作品が減り、短期間に集中して、お客さんが来るようになった。劇場の手狭感を解消するために」と、約60席増となる新劇場への移転理由を説明する。

 同じころ、映画マニアとして知られる内藤篤弁護士が名画座の開館を熱望。両者と、若者向けエンターテインメントの商業施設建設を目指していたキュー・アックスが、共同で運営することになった。

 北條支配人は、「かつてミニシアターに通った人たちは、差異を求めて映画を見る楽しみを知っている。彼らに訴えかける仕掛けができれば」という。

 一方、ユーロスペースのあった場所には、取次会社の日販が運営する「シアターN渋谷」が昨年末にオープンした。日販は15年前から、映像事業に参入し、映画製作にも積極的に出資している。「作品の受け手である観客との接点を持ちたい」と、自前の映画館を持った理由を語る。


平日の午前にもかかわらず、多くの観客でにぎわう東京・渋谷のミニシアター「シネマライズ」。新たな映画館の参入で、渋谷の映画街の一層の活性化が期待される

 近藤順也支配人は「自社の映画ばかりでなく、劇場自体の質を上げる作品の上映」で、映画館の知名度アップに力を注ぐ。

 現在上映中の「ホテル・ルワンダ」は、大虐殺を扱った社会派作品。幅広い層の観客を集め、満席となる回も多い。近藤支配人は「ユーロスペースは映画作家を育ててきた。しかし、『ホテル・ルワンダ』のヒットは、監督名ではなく、内容で、観客にアピールできることが実証された」と強調する。ロビーに映画関連本を展示し、だれでも気楽に来られる「本屋さんみたいな映画館」を目指す。

 配給会社のギャガ・コミュニケーションズが運営する「シネマGAGA!」もあす11日に開館する。「自社作品を上映する選択肢を増やす」(尾関栄二・興行準備室マネジャー)のがねらい。しかし、シアターN渋谷同様、「他の会社の配給作品の上映にも積極的に取り組んでいく」という。

 激化する渋谷のミニシアター戦争への参入について、尾関マネジャーは「渋谷は若者の情報発信基地。他の映画館と共存し、街の活性化につなげたい」と話している。

六本木にはアジア映画専門館


六本木ではアジア映画専門のシネマート六本木が開館する

 一方、六本木に11日にオープンする「シネマート六本木」は、国内でも珍しいアジア映画専門のミニシアターだ。

 地上3階、地下2階の建物に、四つのスクリーンを有し、邦画だけでなく、韓国、台湾、中国などの作品を上映。11日から4月7日までは、オープニング・イベント「韓流シネマ・フェスティバル」で全20作品を上映する。

 運営するSPOは、劇場用映画の製作、配給やビデオソフト、DVDの制作、販売を業務としてきた。特に、20年近く前から、アジア映画の紹介を手がけ、まだ少数だったファンの期待にこたえてきた。

 ここ数年で韓流ブームが定着し、女性を中心に観客の幅が広がり、常設館が検討された。香月淑晴社長は「映画館に来るお客さんを増やすためにも、需要に見合った作品を上映するのは我々の責務。アジアの資源はボーダーレスで限りないから、多くのスクリーンでの上映が可能だ」と話す。

新たな流通ルートに期待感

 「ミニシアター的!」などの著書がある映画ジャーナリスト、大高宏雄さんに、ミニシアターの現状について聞いた。

 これまでのミニシアターは、興行主が作品を買い付けて、公開するというスタイルがほとんどだった。しかし、最近は、映像関連会社が配給作品や製作出資した作品を、自前の映画館で上映するケースが出てきた。既存のミニシアターでは上映しにくい作品を送り出す場として機能しているのだろう。

 1年間で500本近くの日本映画が製作され、公開されるのが300本余り。公開されない映画が増える中、新たな流通ルートができることは注目すべきだ。最近は、単館興行に代わって、複数のミニシアターで拡大公開する作品も増えている。映画館の増加は、その流れにも沿っている。

 しかし、1館当たりのヒットの規模は小さくなっている。かつては何か月もロングランする作品も珍しくなかったが、現在は6〜7週の上映で終了してしまう。「この劇場ならこの作品」という劇場カラーが薄れたことでもあり、寂しさを感じる映画ファンも少なくないのではないか。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/topics/20060310et08.htm