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2006年03月10日(金) 00時00分

「母子家庭」平均年収212万読売新聞


娘と二人で夕食づくり。慌ただしい毎日を、子どもとのふれあいの一時が支える
「お金より就業支援」の政策に疑問も

 18歳の長男が大学を受験した。関西地方の公立保育所で非常勤の調理員として働く由紀子さん(41、仮名)は、合格を祈る一方、内心で学費をどう工面するか悩んでいる。

 離婚後、待ったなしで長男、公立高校1年の長女(16)、小学2年の二女(8)との暮らしを支えてきた。スーパーのレジ打ちから始め、ようやく見つけた今の仕事は、手取り月13万円。それに児童扶養手当が合計で月4万8000円。長男の分の支給は、年齢が18歳に達したので3月末でなくなる。子どもたちの父親とは連絡がとれず、養育費はもらっていない。

 「昇給の見込みがないどころか、子どもたちが成人するまで続けられる保証もない。3年前に二女が脳膜炎で入院した時は職を失いかけました。後遺症が心配される重症なのに、付き添いで休み続けると即クビなんです。泊まり込んだ病院から出勤しました」

 児童扶養手当は父親と生計が違う子どもの育成支援として1962年に作られた。一般の子育て家庭への生活支援である児童手当とは異なり、事実上の“母子家庭手当”となっている。しかし、離婚の増加とともに児童扶養手当の受給者は増え、2000年に70万だった受給者数は05年に93万を上回った。

 支給総額が急激に膨らんだことで、国は02年に「お金を配るより自立を支援」へと政策を転換。母子家庭の就業支援策を打ち出す一方で、08年度以降は5年以上同手当を受給する世帯の支給額をカットできるという内容の法改正を行った。

 だが雇用環境は厳しいままで、母子家庭の収入は年々低下。厚生労働省の調査で母子家庭の平均年収は1997年に229万円だったが、02年は212万円に。

 「自立支援」も十分とは言い難い。由紀子さんはステップアップを考え、母子家庭の集まりで就労支援の様々な施策を勉強した。資格や技術を身につけるための職業訓練を助成する事業はあるが、内容はパソコン研修やホームヘルパー養成などで、今以上の待遇の雇用に結びつくとは思えなかった。常勤雇用への転換を促す奨励金制度もあるが、正規職員になるには年齢制限があって利用できない。

 「一生懸命働き、子どもに教育を受けさせたい。当たり前の願いが難しいことを知ってほしい」と由紀子さん。

 ひとり親家庭に詳しい神戸学院大教授の神原文子さんは「国は母子家庭への支援を財政カットする方針だが、少子化の中で子育て支援策を強化する流れには逆行するものだ。正社員が減ってパートが増えるなど、女性が働いても自立できない社会構造を変えていく必要がある」と指摘する。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/rensai/20060310ok02.htm