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2006年03月08日(水) 10時09分

大阪ヤミ金心中 容疑者逮捕も無念 依然大きな社会問題毎日新聞

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3人の心中現場近くに花を供え、ヤミ金融業者らの逮捕を報告する山下さん夫妻(右の2人)ら=八尾市のJR関西線わきで7日午後1時20分ごろ、井上直樹写す    「逮捕で少し心の区切りがついた。でも死んだ3人は戻らない」。大阪府八尾市のヤミ金融被害者心中事件は、関係したグループの摘発で全容解明に大きく近づいた。事件から2年9カ月。心中した夫婦らを知る人らは現場に花を供え、冥福を祈った。事件をきっかけに「ヤミ金融対策法」が施行されるなど法整備は進んだ。しかし、ヤミ金被害者は昨年も17万人に上り、依然大きな社会問題となったままだ。【大場弘行、井上直樹、牧野宏美】
 7日午後、八尾市に住む山下久雄さん(81)、彰子さん(69)夫妻ら3人は、事件の現場となった同市内のJR関西線わきを訪れた。夫妻は、取り立てに苦しむ夫婦に25万円を用立てるなど、最後まで親交を続けた。自宅にもヤミ金から嫌がらせ電話がかかるなど、悪夢の体験を共有した。彰子さんは「きれいな奥さんだったが、最後はやつれ果てていた。思い出すたび心が痛む」と無念そうに話した。
 事件は、主婦(当時69歳)が03年4月、1万5000円を借りたのがきっかけだった。携帯電話による勧誘とみられ、当時は「090金融」と呼ばれ、強引に指定口座に振り込むなどの手口が横行した。
 だが、10万円を振り込んでも業者は「完済していない」とさらに支払いを要求。主婦は彰子さんへの手紙に「2万円借り入れして15万円も支払わされている」と書いた。それでも業者からの要求は続き、「お金がない」というと「近所から取るからな」と脅された。近所の住民には「保証人になっているから払え。(主婦に)聞けば分かる」などの電話もかかっていた。
 「殺すぞ、殺すぞ、殺すぞ」。脅しの電話は連日かかった。彰子さんへの手紙には「毎晩、毎晩デンワに怯(おび)えています。主人も兄も私に同情して死を決意してくれました」とも書かれていた。最後まで、「借金」を返そうともがく主婦らをもてあそんだヤミ金グループ。線路脇の花束を見つめながら、久雄さんは「今は、正直な人間がばかをみる時代だ」と吐き捨てるように話した。
 彰子さんらはこの日、「容疑者が捕まるまでは」と持っていた最後の手紙を花束の前で焼いた。白い煙が、青空に吸い込まれていった。
 一方、大阪市内に住む主婦の兄(81)は、「事件の解決を願っていたのでよかったが、死んだ妹たちが帰ってくるわけではない」と言葉少なに語った。事件のことを頭から消し去るよう努めているが、「月命日のたび、妹の思い出がよみがえる」とも。事件の全容が解明されれば、返済金の返還や慰謝料などを求める損害賠償請求訴訟など、法的手段も検討しているという。
   ◇  ◇
 事件を受けて04年1月、「ヤミ金融対策法」が全面施行された。早朝や深夜の電話や訪問を禁じ、違反者の罰則も「懲役3年以下または罰金300万円以下」から「懲役5年以下または罰金1000万円以下」に改められた。これにより、ピークの03年(被害者数約32万人、被害総額約322億円)に比べ被害者は大幅に減ったが、それでも05年には約17万人が被害に遭い、被害総額は約238億円に上っている。
(毎日新聞) - 3月8日10時9分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060308-00000003-maip-soci