悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年02月27日(月) 00時00分

海自情報流出 緊張感が不足している 東京新聞

 海上自衛隊の秘密情報がネット上に流出した。防衛態勢や国民の安全に大きな影響が及びかねない。緊急に被害の範囲を調査し、当面の対策と再発防止策を講じねばならない。

 長崎県佐世保基地に所属する護衛艦「あさゆき」からネット上に流出した秘密情報は、戦闘訓練の内容から部隊の個人情報まで、広い分野にわたった。暗号関係書類の一覧表、解読機の操作手順、訓練の計画や記録、隊員名簿、連絡網などが含まれるという。

 戦闘訓練の内容を軍事的に分析すれば、自衛隊の能力や行動様式の一部を把握できるかもしれない。名簿や連絡網は、情報収集活動が拡大される端緒にもなり得る。

 冷戦後も、軍事情報は意味を失ってはいない。上海総領事館の館員が二〇〇四年五月に自殺した事件では、背後に、暗号情報などの提供を要求した中国公安当局の圧力があったという見方もある。海上自衛隊をめぐっては、二〇〇〇年、佐官が秘密資料をロシア大使館武官に提供した事件が表面化している。

 それなのに、今回の情報流出の経緯は、あまりに単純だった。「あさゆき」の乗員が私物のパソコンに秘密情報を保管していたところ、パソコン内のコンピューターウイルス、ファイル交換ソフトの働きで、外部に流出したのだという。

 ウイルスの危険は、コンピューターの初心者でも知っている。私物のパソコンに秘密情報を保存すれば、流出の危険が高まることも常識だ。隊員が部隊のデータベースから、容易に秘密情報を取り出していた実態も不可解だ。

 今回は暗号システム、戦略的作戦計画といった価値の高い極秘情報が流出したわけではないとしても、綱紀の緩みを放置すれば、さらに深刻な事件を誘発する恐れがある。

 日本国内には、米国製のハイテク装備や、ミサイル防衛の共同開発計画など、高度の情報がある。米国が情報流出の危険を感じれば、日米同盟の信用にも傷がつきかねない。

 当面、自衛隊は流出した情報の範囲を確認し、被害を最小限に食い止める手だてを講じねばならない。さらに、情報管理をおろそかにした隊員個人だけでなく、隊員の危険な行動を抑制できなかった自衛隊組織の問題点を徹底的に洗い出し、事件の再発を防止する必要がある。

 自衛隊の組織には閉鎖的な体質があり、情報管理をめぐる新しい知識に疎い面があるのかもしれない。秘密情報を扱う隊員については、教育課程も再点検すべきだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060227/col_____sha_____002.shtml