悪のニュース記事

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2006年02月23日(木) 00時00分

ストップ ワンクリック詐欺 東京新聞

 インターネット上で問題になっているワンクリック詐欺。東京地裁で先月末、この手口で金を請求された被害者の精神的苦痛を認め、悪質なサイトの運営者に損害賠償の支払いを命じる判決が出た。類犯の抑止につながる画期的な判断が示されたといえる。判決が教える「対処法」とは−。 (渡部 穣)

 訴えを起こしたのは桜井光政弁護士。昨年八月、インターネットのアダルトサイトで女性の写真をクリックしただけで、三万九千円を請求されたという。

 水着の女性の写真をクリックした途端、画面が真っ暗になり、意味不明な数字や記号が次々と表れ、最後に「個人情報取得終了」という赤い文字が点滅。さらに数秒後、「会員登録が完了しました! ご利用料金は¥39000 72時間以内にクレジット決済もしくはお振込にてお支払い下さい!」と表示された。

 「自宅や勤務先へ直接請求させて頂く可能性がございます」「社内からのアクセスが発覚した場合に懲戒解雇、減俸等になることがあります」などの文言もあった。

 業務で受け取る電子メールの中に「田舎から夢見て上京したトマト娘たち」というメールがあり、そこのアドレスから入り込んだアダルトサイトでの出来事だった。

 「何が起きたのか一瞬分からなかったが、すぐに怒りが込み上げてきた」と桜井弁護士。

 行動は早かった。まず、インターネットのページを証拠保存。「調査嘱託の申し立て」という手続きで、振込先口座番号などから裁判所に運営者を調べてもらい、被害の二日後に提訴。裁判の迅速化も心掛け、証拠調べなどわずか三回で結審にこぎつけた。

 「裁判に時間がかかることで訴訟をためらう人は多い。どれだけ早くできるかやってみた」と桜井弁護士。「半年以内ならまずまず。今後に応用できる」とほほ笑んだ。

 東京地裁は、原告の言い分をほぼ認め、サイト運営者に即刻三十万円を支払うよう命じた。永野厚郎裁判官は「羞恥(しゅうち)心から泣き寝入りし、支払いに応じることを見込んで多数のメールを送りつけたのは極めて悪質」とサイト運営者を断罪。控訴はなく、判決は確定した。

 桜井弁護士によると、この手の架空請求事件で損害賠償を求めて提訴したのは初めて。「不当請求に応じる必要はないのはもちろん、賠償金も勝ち取れることを示した判決」と意義を強調する。

 類似の詐欺事犯に詳しい池本誠司弁護士はこの判決について、「たとえ実害がなくても、利用者を不安に陥れる不法行為と認め、罰せられることを示し、消費者を勇気づけてくれた」と最大限の評価。ただし、使い捨て携帯電話などで加害者を特定できない場合も多いため、「被害防止のためには法の整備が必要」と訴える。

 国民生活センターでは、「クリックしただけで住所や名前など個人情報が取られてしまうことは、絶対にない。基本的には無視すること。どうしても不安なら、お近くの消費生活センターに相談を」と呼びかけている。

■被害にあったときの対処法

<1>無視する(問い合わせなど、サイト運営者との連絡は絶対にしない。電話番号・名前などの個人情報を相手に教えてしまう結果になるため)。

<2>トラブルに備え、インターネットの画面やサイト名、アドレスを記録・保存する。不安なら最寄りの消費生活センターに相談する。

<3>仕事に支障が生じたり、精神的苦痛を被ったと考えた場合、損害賠償を求める訴訟も視野に入れて弁護士に相談。支払ってしまった場合、金を取り戻す訴訟も。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060223/ftu_____kur_____000.shtml