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2006年02月21日(火) 16時21分

“教会の絶対者”断罪 信者少女暴行判決産経新聞

永田被告 謝罪の言葉なく
 「被害者に謝罪すべきだ」。宗教法人「聖神中央教会」元代表牧師、永田保被告(62)=本名・金保=による信者暴行事件。京都地裁は二十一日、求刑通り懲役二十年を言い渡し、卑劣な犯行を断罪した。“教会の絶対者”は、裁判長からこう促されても最後まで謝罪することはなかった。被害者の関係者らは「被害者にとって事件は終わらない」と改めて憤りを募らせた。
 京都地裁一〇一号大法廷。午前十時過ぎ、ワイシャツに濃いグレーのスーツ姿で永田被告が入廷。硬い表情で傍聴席を一瞥(いちべつ)した後、法廷警備員に誘導されながらゆっくりと席に着いた。
 「被告人を懲役二十年に処す」。上垣猛裁判長が判決を読み上げると、永田被告はじっと前を見据えて立ちつくした。
 「自らの快楽のみを追い求め、欲望のおもむくままに次々に強姦(ごうかん)した」。傍聴席にいた被害者の関係者らが、うつむいて聞き入った。
 これまでの公判で永田被告は、性的暴行の具体的な状況について話が及ぶと、「(被害少女)本人と私と神が知っていることで語りたくない」などと述べ、はぐらかし続けた。
 判決文を読み上げたあと、上垣裁判長は「事実を明らかにし、被害者に謝罪すべきだ」と、永田被告をじっと見据えて諭した。閉廷後、永田被告は弁護士に「何も考えられない」と話したという。
 一方、被害少女のケアにあたっている「被害者の会」が記者会見。同会の村上密牧師は「判決は当然」「まだ整理がつかない状態だが、きちんと罪を償ってほしい」などとする被害少女たちの感想を明らかにした。
 すでに回復に向かっている被害者もいるが、親からは「真実を語らず、謝罪の意識が感じられなかった」との声が上がったという。
≪礼拝者、支部激減 真相究明せず≫
 永田保被告が逮捕されて約十カ月。事件の舞台となった京都府八幡市の宗教法人「聖神中央教会」本部は主不在となり、土地・建物は被害者への損害賠償に充てるため売却され、今は更地になっている。
 同教会によると、旧本部近くの教会関連施設を本部として活動を続けており、現在も五十−六十人が礼拝に参加している。しかし、最盛期には約二百人が集まっていたといい、事件は信者らの間に影を落としている。
 「以前は頻繁に信者の行き来があったが、今はぱったりとなくなった。礼拝の音楽が聞こえることもない」と、近くにあるガソリンスタンドの女性店員(22)は話す。
 事件が表面化する以前から、各地に二十以上あったとされる支部は次々と同教会を離れ、現在は滋賀、岡山、鳥取の三県に計四支部があるだけ。それでも同教会の代表を務める西山務牧師は「教会を必要とする人がいるので、活動していく」と力を込める。
 永田被告について、「聖書の言葉の通り人は人を裁かない」として、教会として事件の真相を究明する考えはないという。
≪メッキはがれた“聖職者” 宗教学者・山折哲雄氏≫
 宗教は世俗化すればするほど宗教倫理から世俗倫理に近づく。今回の事件については、「人の心の救済」と「狂気」の二面性を併せ持つ宗教の本質を考えると、単に「悪い宗教や人間」による犯行と特別視するのは浅薄ではないか。
 歴史的に性的な領域に踏み込んだ宗教は多く、「聖的」と「性的」なエクスタシーが紙一重ということは、人類学や宗教学でも指摘されている。
 多くの悩みを持つ信者に対して、宗教家は答えを与えなければならないが、影響や効力がある言葉を与えられる人間は限られ、踏み外す人間と大成する人間との差は必ずしも絶対的なものではない。永田被告は、途中でメッキがはがれ信仰の道から離れていったのではないか。
 少女らが受けた傷は深く、同様の事件を起こさないためにも社会、とりわけ宗教家が今回の事件が生まれた背景を繰り返し自問することが今後の課題となるだろう。(談)
≪視点 「抵抗、拒絶は不可能」と指摘 ≫
 「性犯罪事案の中でも他に類をみないほど極めて悪質な事案」。代表牧師という「絶対的な立場」を利用し信者の少女を暴行した事件で、京都地裁は、永田保被告に求刑通り懲役二十年の判決を下した。「説教で少女らを“マインドコントロール”していない」とした弁護側の主張についても、「被告人に抵抗し、拒絶することは不可能」と指摘、検察側の主張に沿った判断を示した。
 この事件で検察側は、十二歳の少女らに対する暴行に強姦罪、十四歳以上の少女らへは準強姦罪を適用した。
 公判では、準強姦罪について「説教が少女の抵抗を奪ったかどうか」が争点になった。検察側は、少女らが物心つく前から説教を聞かされていた点などから、「性交を拒絶できる心理状況になかった」と強調した。
 「逃げ出したら永遠に地獄に落ちると信じていた」「(永田被告は)教会内で絶対だから誰も助けてくれないと思った」。被害少女らの供述調書は、絶対者として君臨していた永田被告の姿を浮き彫りにしており、判決は検察側の主張を認め、「少女らは従順に行動せざるを得なかった」と指摘した。
 性犯罪事件として改正前の刑法では最高の懲役二十年が求刑され、京都地裁が求刑通りの判断を下した意味は重い。(林英樹)
(産経新聞) - 2月21日16時21分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060221-00000007-san-soci