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2006年02月08日(水) 00時00分

ムハンマド風刺漫画 なぜイスラムは怒るのか  東京新聞

 デンマーク紙がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画を掲載した問題は、欧州紙の再掲載を受けてイスラム教徒の抗議行動が各地で拡大、事態は悪化を続けている。なぜイスラム教徒は怒り、抗議が収まらないのか。イスラム教スンニ派最高学府アズハル(カイロ)の宗教間対話委員会代表、ファウズィ・ザフザフ師(73)に聞いた。 

  (カイロ・萩文明)

 ——なぜムハンマドを描いてはいけないのか。

 「ムハンマドを含む預言者たちに神は特別な地位を与えた。顔を想像して描くことは、預言者たちに特定のイメージを与えることにつながる。結果、描写により預言者への敬愛が徐々に薄れることになる。私たちはこのドアを開けるべきではない。これがイスラム教の基本的な考え方だ」

 ——顔を「描いたこと」が問題なのか。

 「善意で肯定的に描いた場合でも容認はできないが、そうした例は過去にもあった。その都度、対話を通して私たちの考えを主張し、平和的にお互いの理解に達することができた。今回は預言者を爆弾テロリストに見立て悪魔のように描いた。ムハンマドを信じる全イスラム教徒がテロリストだという悪質なメッセージと、われわれを傷つける意図を含んでいる。見た瞬間、私も嫌悪感を抱き『反イスラム勢力があらゆる機会を利用して私たちを侮辱しようとしている』と感じた」

 ——掲載紙は「表現の自由」と主張している。

 「表現や信仰の自由の大切さは認める。だが信仰の自由と、信仰に関する表現の自由は別だ。信仰に関する表現が信徒を傷つけてはならないことは国際社会の常識だ。今回の事態は表現の自由とはまったく別次元で、悪質な冒とくだ」

 ——欧州人の拉致や大使館への放火など暴力的な抗議が続いている。

 「賛同しない。暴力は何も解決せず、イスラム教への誤った印象を強めるだけ。私たちは暴力や脅迫に訴えないことと、デンマーク製品の不買運動を呼び掛けている」

 ——デンマーク紙は一月末に編集長が「謝罪」した。

 「あれは謝罪ではなく単なる遺憾の表明だ。私たちは飾りのない真剣な謝罪だけを求めている。それがあれば聖職者は『終わり』と呼び掛ける。それが、事態解決への唯一の道だ」

 ——ならば政府への謝罪要求は筋違いでは?

 「デンマーク政府への要求は風刺漫画への謝罪ではなく対応への謝罪だ。問題視しているのはラスムセン首相がアラブ・イスラム諸国の大使の面会要求を拒絶し、掲載紙を擁護したこと。首相の立場は理解する。例えば首相が『政府は表現の自由に介入できないが、他者を傷つける表現をすべきではないと思う』といえば、問題はここまでこじれなかった。首相の対応も怒りを増幅させた大きな要因だろう」

 ——イスラム社会と西欧の対立なのか。

 「違う。キリスト教有力者も私への書簡で『風刺漫画は表現の自由の原則をねじ曲げている』と述べている。米政府や英紙などは私たちの主張を理解しているし、英BBCも放送で漫画部分を隠す配慮をしている。これが知恵だと思う。西欧対イスラムではなく、西欧の一部の問題だ。(欧州紙の転載は)編集長更迭など代償も払っており一概には言えないが、最大の問題は依然、デンマークにある」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20060208/mng_____kok_____004.shtml