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2006年02月02日(木) 17時30分

東横イン 無駄排除で急成長 客室稼働率突出83%毎日新聞

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東横インの西田憲正社長    無届け・不正改築が相次いで発覚したビジネスホテルチェーン「東横イン」(本社・東京都大田区)。シングル料金が4000〜6000円台の低価格で急成長した同ホテルの経営手法とは?
 「(条例など)違反の認識はあった。時速60キロで走るところを67、68キロで走っていいと思っていた」。1月27日の記者会見で淡々と語った西田憲正社長(59)。
 西田社長は会見のやりとりと同様、独特の経営手法を持っている。社長の著書「東横インの経営術」(日本評論社)の副題は「女性のセンスを生かして日本一のホテルチェーンを創(つく)る」。パートも含めた全従業員3000人のうち女性は95%。全国121軒(1月末現在)の支配人とフロント係は全員女性だ。地元採用でホテル勤務経験のない人を採用している。
 関係者によると、西田社長は「素人だから常識を打ち破れる」が持論で、女性従業員のアイデアをサービスに盛り込んでいる。例えば、おにぎりなどの朝食は無料で、フロントにある自動販売機は清涼飲料水1本100円、缶ビール(350ミリリットル)220円。
 給料は支配人の場合、初任給約26万円で1年目(年収約320万円)は賞与がない。勤続10年で年収約570万円となるが、年齢給や能力給はない。西田社長は「給料に格差をつけると女性の場合、燃え尽きてしまう危険性がある」と著書で述べている。
 86年、第1号ホテルを開業した蒲田が東京と横浜の間に位置することから「東横」が社名になったという。売り上げの指標となる客室の稼働率は83.1%(05年3月)。全日本シティホテル連盟が調べたビジネスホテルの平均稼働率(05年)は67.4%で、東横インの集客能力が突出している。
 関係者によると、ビジネスホテルの損益分岐点は稼働率70%台といわれる。ところが東横インの場合、3カ月連続で75%を切ると社内の「稼働率向上実行委員会」の調査を受け、支配人は西田社長に、電子メールで日々の業務について報告しなければならない。
 出張者の間で「料金が安いだけでなく、従業員の接客が丁寧」との評判を得ている背景には、こうした労務管理に加えて、低コストでホテルの建設と維持・管理を行うシステムがある。新規建設の際に土地を買収せず、地主をホテルオーナーとして30年間の賃貸契約を結び、グループ会社に工事を任せることで建設コストを抑えてきた。
 レストランや宴会場も「無駄」との発想でつくらない。西田社長は日本大学商学部卒業後、冷房空調会社に就職。その後、父の経営する電気工事会社に入った。著書では、電気図面を描く作業を通して「どういう建物にすれば高い利益を確保できるかを学んだ」「限られた面積から、いかにして効率よく部屋を取るか。これを『陣地取り』と呼んでいる。かなりの自信を持っている」と述べている。
 身体障害者向けの客室、駐車場の改築などについて、西田社長が記者会見で「年に1、2人しか使わない。一般客の使い勝手が悪い」と語った論理には、「無駄」の発想が貫かれている。

 ◇「順法」「弱者配慮」が欠如

 財団法人・社会経済生産性本部は「客層の絞り込みを突き進め、身障者を排除してしまった。ホテルが果たすべき社会的役割を理解していない」(コンサルティング部)と指摘。サービス業に詳しい国際教養大学(秋田市)の土井久太郎特任教授は「女性を活用して企業規模を拡大させたが、日本社会全体を覆う、順法精神と弱者に対する配慮の欠如が表れている。一企業だけの問題とせず共通の教訓としなければならない」と話している。【野島康祐、高橋昌紀】
(毎日新聞) - 2月2日17時30分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060202-00000024-maip-soci