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2006年01月31日(火) 11時26分

開発者が語る“ポストWinny”ITmediaニュース

 P2Pファイル交換ソフト「Winny」開発者の金子勇氏を招いた公開研究会が、都内の国際大学GLOCOMでこのほど開かれた。金子氏は「匿名性と効率性の両立を目指した」とWinny開発の意図を語り、“ポストWinny”の姿も示唆。Winnyの倫理を論じるパネルディスカッションにも耳を傾けた。

 「匿名性と効率性は、基本的にはバッティングすると思っていた」——金子氏がWinnyを開発したきっかけは、匿名性の高いファイル共有ソフト「Freenet」との出会いだ。Winnyは、Freenet的な匿名性を保ちつつ、多段中継やキャッシィングの仕組みなどを活用することで、Freenetよりも効率的なファイル共有システムを目指したという。

 その目的はある程度達成され、Winnyは多くのユーザーの支持を得た。ただ「Winnyには、未解決の技術的テーマがある」金子氏は語る。放流されたファイルの管理と、システムのオープンソース化だ。

 金子氏は、一度放流したファイルは消せないという管理不可能性は「Winnyの技術的欠陥」と自ら認める。これを解決するアイデアはいろいろあるというが、Winny開発をめぐって公判中の今の彼は、それを試せる立場にはない。

 「ソースは公開してもいいと思っていた」と金子氏は明かす。公開できなかったのは“ただ乗り”を防ぐためだ。Winnyは、ユーザーのアップロードファイルが多いほどダウンロード効率が上がる仕組み。これによって流通ファイル量を増やし、システム全体の効率を高めていた。ソースを公開した場合に、ダウンロード専用Winnyが開発され、効率が下がることを恐れたという。

 ただそれも、金子氏がWinny開発を続けていた2003年ごろの問題。その後、オープンソースで、かつ、効率性を重視したP2Pファイル交換ソフト「BitTorrent」なども登場し、オープンシステムで効率性を高められる可能性が開けてきた。金子氏は、次世代のP2Pファイル交換ソフトは、BitTorrentの発展系で、匿名性と効率性を備えたオープンソース型システムだろうと話し、それが実現する環境はすでに整っているとした。

●Winnyに見る、ソフト開発の倫理とは

 金子氏の講演の後に、Winnyの倫理的な問題点を考えるパネルディスカッションが開かれ、金子氏は観客席から時に苦笑し、時には拍手しながら耳を傾けた。

 産業総合研究所情報セキュリティ研究センター主任研究員の高木浩光氏は、Winnyの問題は、アーキテクチャそれ自身ではなく、ユーザー側が自覚のないまま著作物ファイルを中継し、著作権法に違反しえたことにあると指摘する。高木氏は「開発者側は、Winnyの利用が著作権違反につながる可能性があることを、ユーザーに分かりやすく告知すべきだった」と話す。

 ただ、開発者個人の倫理だけに責任を問うのは無理があるという意見もある。GLOCOM主任研究員の山根信二氏は「われわれは、コントロールできない技術をすでに手に入れてしまった」と指摘する。たった1人の開発者がWinnyのようなソフトを作って世界に配布でき、それを喜んで使った人がたくさんいるという現状を、まずは受け入れるべきという意見だ。

 山根氏は、趣味のソフト開発は「自由でアナーキーな方向に限りなく行こう、という流れがすでにある」と述べる。GLOCOMの濱野智文研究員も「『Winnyが良くなかった』という結論がたとえ出たとしても、『Share』(ポストWinnyをうたうP2Pファイル交換ソフト)のように、Freenetの匿名性を利用した“脱倫理的”な動きがどんどん出てくる」と指摘する。

 こういった流れにはあらがえないと認識した上で、対処法を考えるのが今後の課題と山根氏は指摘する。例えば“開発者憲法”のようなものを作ったり、外部機関が監視するなどといった解決策を、「実現は困難だろうが」(山根氏)考えなくてはならないとする。

 また、あるソフトが社会に対してどんな影響をもたらすかは、開発時には予見しにくい。「ファイルローグ」裁判の被告代理人を務めた弁護士の小倉秀夫氏は「開発者がソフトをリリースした時、それが社会的にどう受け入れられるかは分からない」と、ファイルローグの例をひいて話した。

 解決策の1つとして小倉弁護士は、ソフト開発に“いつでも引き返せる仕組み”があればいいと話す。開発したソフトに有効期限を付けておき、社会にマイナス影響を与えると分かった時点で有効期限の更新をやめ、ソフトを使えなくする——といったアイデアだ。

 Winnyがもたらした社会的悪影響は、著作物データの流出という経済的損失で、「人が死んだわけではないからそんなに目くじらたてなくても」という意見もある。これに対してGLOCOM客員研究員の鈴木健氏は「ソフトが物理レイヤーをコントロールできる社会が20〜30年後には確実に来る」と反論する。例えば、ソフトウェアのハッキングで回転ドアの速度を早める——といったことが将来は確実に可能になり、ソフト開発が人を殺す力を持つという状況が必ず来るとし、倫理面を今から考えておくことは重要だと指摘した。

■さらに画像の入った記事はこちら
  http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0601/30/news047.html

http://www.itmedia.co.jp/news/
(ITmediaニュース) - 1月31日11時26分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060131-00000032-zdn_n-sci