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2006年01月30日(月) 00時00分

耐震偽装で注目『住宅性能表示制度』 東京新聞

 姉歯秀次・元一級建築士による耐震強度偽装事件以降、「何を信用したらいいのか分からない」など、マンション購入者の不安の声はやみそうにない。そうした中、見直されているのが国の住宅性能表示制度だ。建設業界の中には、耐震性など品質を証明する同制度を信頼回復の“切り札”にしようとする動きも出始めている。 (生活部・渡部穣)

 ■耐震性

 「えっ、そんなにいろいろなことの証明になるんですか? 知らなかった」。東京都練馬区にあるマンションのモデルルーム。三十代の会社員の夫婦は、営業マンから「住宅性能評価書」の幅広い保証領域を説明され、驚く。「それだったら、選ぶとき参考になるし、あった方がいいですね」

 国が住宅性能表示制度を始めたのは二〇〇〇年十月。新築物件について、耐震性や耐久性、省エネ性など、九項目の検査に合格すると、住宅性能評価書が交付される。国から認可を受けた第三者機関が検査する。

 新築の評価は設計段階と建設段階で取れる二種類があり、検査結果は項目ごとに等級や数字で示される。数字が大きいほど品質に優れている証明となり、例えば耐震性の場合、等級1なら国の建築基準法並み、2が基準の一・二五倍、3は一・五倍といった具合だ。

 ただし、耐震等級を高くするために壁を多くすれば、床面積に対する窓の開口率は低くならざるを得ないなど、一方を高めれば、もう一方は下がる項目もある。今年四月には防犯性能も加わり、十項目に強化される。

 ■取得は5%

 「まだ認知度が低くて、コストをかけてまで取得するメリットはなかったので…」。ある開発・販売業者の営業担当者は打ち明ける。別の中堅業者は「マンションの場合、一戸当たり約四万円のほか、廊下など共用部分の検査にも費用がかかり、販売価格が上がってしまう」と話す。

 買い手側の事情も大きい。「〇×駅から5分」「80平米」「オール電化」といった立地や床面積、設備そして価格を重視しがちで、「耐震性は疑っておらず、高くても、国のお墨付きが欲しいというお客さまは少なかった」(大手業者)。

 国土交通省によると、設計段階の評価書の取得率は〇四年度で14%弱。建設段階では、昨年六月までの約五年間で約二十七万戸と、5%弱にとどまっている。

 ところが、耐震強度偽装事件を契機に、どこの業者にも問い合わせが増えているという。

 新築マンションのすべてで設計、建設の評価書を取得する大京は、「安心と安全を売る際の客観的な評価。今後、お客さまに評価書の意義が広まれば、商品の評価もさらに上がるでしょう」(広報室)と期待する。

 ■課題

 「評価書の信頼を裏切る大打撃だった」。国交省住宅局の担当者は残念がる。一連の偽装物件で、横浜市都筑区のマンションが設計評価書を取得し、耐震等級1の評価を受けていたことが発覚した。

 偽装を見抜けずに建築確認を出した検査機関が、性能の評価も兼ねていた。全国に百十二ある評価機関のうち、約九割の九十五機関が建築確認機関を兼ねているのが実情だが、「別の会社が評価するよう義務付けるなどの改善が必要」と指摘する専門家は多い。

 国交省は「建設評価書なら完成まで四、五回の現場検査が入り、信頼性が高まる」と説明する。

■健全な市場づくりに活用を NPO法人建築技術支援協会米田雅子常務理事に聞く 

 健全な住宅市場をつくるためには、住宅性能表示制度の活用が有効だ。住宅の平均寿命は、英国が約百四十年、米国が約八十年なのに比べ、日本は四十年と極端に短い。古くても良い物件はたくさんあるのに、土地ばかりに価値を付け、本来もっと評価の対象となっていい住宅の品質に重きを置いてこなかったことも一因ではないか。

 購入後から価格が下がり続ける減価償却方式を改め、耐震補強工事などで住宅の価格が上がるなど、「品質が優れた住宅は、古くても高い」という当たり前の住宅市場が生まれることを願う。

 建設性能評価を取得しておくと、住宅に欠陥が見つかり紛争となったとき、国が定める指定住宅紛争処理機関を一万円の申請料で利用できるメリットなどもある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060130/mng_____kakushin000.shtml