悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年01月28日(土) 00時00分

消費者は冷静 米国産牛 なくても食卓困りません 東京新聞

 米国産牛肉の輸入が再び停止された。外食産業などへの打撃は大きいが、一般の消費者は冷静に受け止めている。輸入がなかったこの2年間で、家庭では米国牛なしの食生活が当たり前になっているからだ。安さは魅力。しかし、安全性を犠牲にした拙速な輸入再開論には、消費者の批判の目が向けられそうだ。 (杉戸 祐子)

 「鶏肉と豚肉を中心に魚も取り入れてます。牛肉は月に一、二回食べるかどうか」。埼玉県熊谷市の主婦岡田教子さん(58)は、日ごろの食生活についてこう説明する。

 牛肉は国産にこだわっている。「米国産は安いけれど、生産者が多すぎてルールが徹底できていない気がして。生産や流通のルートを知るには、多少割高でも仕方ないし、作り手や売り手との信頼関係を保つためのコストかな」

 千葉県野田市のパート荒井則子さん(61)は「普段は魚が中心」という。牛肉は国産派で、今回の輸入停止には「やっぱりね…」と思った。「孫に好物の牛丼を作ってあげるとき、何よりも安全面が気になる。国産は高いけど、安心を買っていると思っています」

   ◇

 米国でBSE(牛海綿状脳症)が発生し、米国産牛の輸入が初めて停止されたのは二〇〇三年末。しかし、この年以降の国産牛の卸値は、わずかに上昇した程度だ。

 「輸入停止をきっかけに消費者の選択が外国産から国産にシフトした。安全面を気にするようになったようです」と東京食肉市場(東京都港区)の担当者は分析する。「年間平均がわずかに上昇したのも、国産牛の生産農家が減って供給量が落ちているから。今回の輸入再停止の影響は今のところない」とみる。

 他方、輸入牛の動向を財務省の「日本貿易統計」でみると、輸入量の合計は〇三年が約五十二万トン、〇四年は約四十五万トン。米国産の輸入停止に伴って豪州産が増えているが、輸入量そのものは減っている。

 日本消費者連盟(東京都新宿区)の水原博子事務局長は「安全性や価格面から牛肉以外の食材を中心に献立を組み立て、国産牛を時折取り入れるという家庭が増えているようですね」と語る。自身もお正月にだけ、国産牛のステーキを食べ、普段は魚と豚肉、鶏肉を主菜にしているという。

 「わが家では牛肉はたまに食べるごちそう。そうすることで、子どもに食の喜びも教えられます。大量生産、大量消費で見逃されてきた食品の『質』を考え、安全面に投資することはぜいたくではありません」と呼びかける。

 BSE問題に詳しい青山学院大学の福岡伸一教授(分子生物学)は、「輸入のなかった二年間、そして今回の再停止後も国内の一般消費者に混乱はない」と指摘。

 「米国牛がなくても食卓は困らないぞ、ということの証左。外食産業への影響はあるが、政府は輸入再開を急がず、国内と同じ基準の安全が確保できない限り、米国牛を受け入れない強い姿勢を示すべきです」と訴える。

 ◇これまでの経緯◇

 米国産牛肉は2003年末にBSEの発生が確認されたのに伴い輸入が禁止された。政府は(1)生後20カ月以下の若齢牛に限定(2)特定危険部位の除去−という条件付きで昨年末、2年ぶりに輸入を再開した。

 しかし、今月20日、特定危険部位の脊柱(せきちゅう)が残った牛肉が発見され、輸入は再度停止された。米国側は、安全確保の徹底を強調しているが、輸入再開のめどは立っていない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060128/ftu_____kur_____000.shtml