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2006年01月26日(木) 00時00分

投資サービス法 国会提出へ 東京新聞

 幅広い金融商品の販売や勧誘について規制する「投資サービス法」(仮称)の法案を政府が今国会に提出する見通しだ。元本割れする危険性の説明が不十分だったりして、金融商品を売った会社と消費者とのトラブルが絶えないことが背景。しかし、消費者団体や日本弁護士連合会は「政府がまとめようとしている法案では消費者保護に十分ではない」と不満を募らせている。 (白井 康彦)

 法律の不備を突く金融商品によって投資家たちが大損する事例が後を絶たない。

 全国の投資家から約四百九十億円を集めて経営破たんした通信ベンチャー平成電電の事件でも、「匿名組合への出資」という形式だったため、金融監督行政の対象にならず、被害を拡大する一因となった。

 悪質な営業がはびこる現状に対応して、銀行法や保険業法などの縦割り業法の体制を見直し、金融商品の販売を横断的に幅広く規制しようとするのが投資サービス法。法案はまだ固まっていないが、大枠は金融審議会が昨年十二月に出した報告書「投資サービス法(仮称)に向けて」に示されている。

 対象は、株式や投資信託、変額保険など元本割れの危険性のある金融商品。規制は▽危険性の説明を怠ったときは行政処分の対象にもなる▽知識や財産状況から見て不適格な消費者に勧誘しない「適合性の原則」を盛り込む▽頼んでいないのに電話や訪問販売で勧誘する「不招請勧誘」の禁止の規定を設ける−といった内容だ。

 消費者の視点で金融取引の在り方を研究している「金融オンブズネット」は十一日、東京都内でこの法律についての学習会を開いた。

 金融庁市場課の三井秀範課長が講師として法案の大枠を説明。金融審議会(首相の諮問機関)の委員が審議会の「ホップ、ステップ、ジャンプ」の三段跳び論を紹介し、参加者の関心を集めた。

 同審議会が参考にしてきたのは英国が二〇〇〇年に制定した「金融サービス・市場法」。証券、先物取引、預金、保険などほとんどの金融商品・サービスが規制対象となり、消費者保護の規定も充実している。

 日本では、関係する業界や省庁の反対論、消極論が強くて英国のような制度の実現は遠いが、金融審議会の審議がもとになり、二〇〇〇年には金融商品販売法が制定された。同法を「ホップ」、今回の投資サービス法を「ステップ」、将来の日本版金融サービス・市場法が「ジャンプ」と位置づけて消費者保護を強化していきたいという。

 しかし、学習会の参加者の中では「本当にホップ、ステップと進んできているのか」といった不満の声が目立った。

 変額保険販売のトラブルなどをめぐって銀行の責任を追及している「銀行の貸し手責任を問う会」の会員たちは「この法律ができても、銀行があまり影響を受けないのはおかしい」と訴えた。

 消費者団体や日弁連が問題視しているのは、第一に、対象外の商品が依然として多いこと。ほとんどの預金や通常の保険は対象外。トラブルが絶えない商品先物取引についても、報告書は「投資サービス法との関係を整理することが望ましい」とあいまいで、対象になるかどうか微妙だ。

 第二は、消費者保護規定の弱さ。トラブルの温床になっている不招請勧誘は、現行法では金融先物取引に限って禁止されており、日弁連などは「不招請勧誘禁止を幅広い金融商品の行為ルールにすべきだ」と訴えてきたが、今回の報告書では「当面は現行の範囲とする」という表現にとどまっている。

 日弁連消費者問題対策委員会に所属する大田清則弁護士は「消費者側が不招請勧誘とか適合性原則違反の営業行為があったことを証明すれば、業者が契約の取り消しや損害賠償をしなければならないような規定も盛り込むべきだ」と指摘する。

 投資サービス法に吸収される現行の金融商品販売法は、金融商品の危険性の説明義務や、違反があったときの損害賠償責任を定めているが、説明がなかったことは消費者が証明せねばならず、同法に基づいた訴訟で消費者が救済された事例はほとんどない。こうした不備をどう改善できるのか。

 投資サービス法案の国会審議は春以降に始まる見通し。消費者団体や日弁連は、消費者保護が強まる方向での審議を期待している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060126/ftu_____kur_____001.shtml