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2005年12月24日(土) 16時26分

メモリー’05:取材帳から 悪質リフォーム /埼玉毎日新聞

 ◇進まない被害回復−−不当利益没収に法の壁
 まるで“いたちごっこ”だ——。県警捜査員は特定商取引法(特商法)違反容疑による悪質リフォームの摘発をそうやゆする。同法の摘発は形式犯にすぎず罰則が「安い(軽い)」からだ。「犯罪で得た不当な利益を没収する道がなく、再発防止にも被害回復にもつながらない」。富士見市の認知症姉妹の被害でクローズアップされたこの問題は、県警の摘発によって業者の悪質性とともに、当局や被害者がよりどころとする法体系の不備も露呈した。【村上尊一】
 県警は昨年、年約8億円を売り上げていたリフォーム業者「ルネックス」を同容疑などで摘発した。有罪判決を受けた男の口座に多額の入金があることを突き止めた。だが手も足も出ない。「残った社員が他県で別会社をおこしている」と捜査員は明かした。
 また、県警は今年6月、数千万円を荒稼ぎした営業マンを同容疑などで逮捕した。蓮田市の用水路で見つかった現金約1800万円の持ち主で、公判で訪問販売の収益だと明らかにした。だが、県警は遺失物法に基づき返さざるをえなかった。
 行政も同じだ。
 県などは特商法に基づき悪質業者に「業務停止命令」を発令できる。従わなければ刑事告発し裁判で有罪なら「3億円以下の罰金」を科せる。だが業者は「命令を受けると閉業し、会社名、代表者名を変える」(関東経済産業局)という。
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 特商法は「処罰規定がざる」とさえいわれる。ヤミ金などの収益没収を強化した処罰法「組織犯罪対策法」は、出資法や著作権法など60を超える個別法が適用対象になっている。しかし、特商法は対象外だ。その適用を求める声が上がっているのは当然だ。
 一方、消費者問題に詳しい池本誠司弁護士は「同法による没収は被害の回復につながらない」と指摘する。没収金は一般会計に組み込まれ「被害者に戻らず、賠償を求めても業者にも支払い能力がない」という。このため、日弁連は、裁判所が弁護士を財産管理人に選任し、国が没収した犯罪収益を被害者に分配するなどの新たな仕組みづくりを国とともに検討している。だが、議論は緒についたばかりだ。
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 富士見市の姉妹は思わぬ形で被害回復した。報道を機に、幽霊会社などを除く十数社が被害総額のほぼ半額の計2500万円を返した。だが極めてまれなケースだ。
 姉妹の後見人、平岡直也弁護士は「民事解決をめざしても強制捜査権のない弁護士では、情報収集に限界がある。刑事告訴が被害回復につながる仕組みが必要」と言う。
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 「刃向かえばひとたまりもない」。こつこつためた約900万円をリフォーム業者に脅し取られた90歳代の女性の悲痛な叫びだ。業者は刑事罰を受けたが、被害弁償はされなかった。腰をかがめて弱々しく歩くこのお年寄りに自力で被害回復しろと言えるだろうか。
 だが、救済の道は法の壁に阻まれ、閉ざされている。=随時掲載します

12月24日朝刊
(毎日新聞) - 12月24日16時26分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051224-00000012-mailo-l11