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2005年12月07日(水) 00時00分

『グルじゃないと偽造マンションなんて建たない』 検査後に柱抜くことも 東京新聞

 業者同士の責任のなすりあいの様相を呈してきた耐震強度偽造問題。震源地の姉歯秀次建築士は刑事告発されたものの、行政の聴聞会には姿を見せず真相は依然ヤブの中だ。そこで、こちら特報部では、首都圏のマンション開発“裏”事情に詳しい不動産コンサルタントに聞いた。「問題は姉歯物件だけなの?」

 「誰が特段に悪いというんじゃない。全部がグルじゃないとああいう設計偽造マンションなんて建ちようがないんです」

 耐震構造計算書の偽造問題について、都内の不動産コンサルタントA氏は業界の受け止め方をこう話す。

 A氏は不動産業界のキャリアが約二十年。土地を仕入れてマンション竣工(しゅんこう)後、大手デベロッパーに売り渡す“専有卸し”を主に手がけ、現在は不良債権にまみれた土地を安く買収した後、整理、評価しマンション、一戸建て用に売却するコンサルタント業務を行う。

 A氏によれば、従業員が二十数人しかいないヒューザーのようなデベロッパー(事業主)の場合、ボーリング調査、電波障害、近隣対策などの諸実務などは、ほとんどアウトソーシング(外注)しており、「実質上、土地の仕入れなどの企画を立案し、販売するだけの存在。設計書を自社内で再精査する能力もないのでは」とみる。

 「通常、設計会社はしっかりしたものをつくろうとしてお金を掛けた過剰設計に陥りがち。そこをデベロッパーが法令順守の範囲内でコストカットしていくという攻防がある」とA氏。例えば、都内で現在、計画中の三十階建てマンションの場合、大手設計会社は地下駐車場を造ってマンション外観の印象をよくするとともに、建物全体の構造を強化する設計を提出してきたが、この設計案では屋外駐車場を造るより約十億円工費がかさむため、デベロッパーが設計変更を求めているのだという。

 一方、鉄筋の数が通常より大幅に少ないなどの問題は施工段階で気付くはずだという指摘も多い。A氏も「大手のデベロッパーの場合、毎月二回、現場で現場定例会議というのを開き、設計者も来て設計通りに建物を建てているかどうかなどを検査する」という。

 ■現場顔出せば車代2万円

 姉歯建築士は問題マンション建築業者の木村建設からキックバックを要求されたとしているが、「建築現場に建築主が行くだけで、現場監督からお車代として二万円がもらえることもある。業界内のこういった習慣がもっとエスカレートしていた可能性はあると思う」とA氏は分析する。

 マンションやホテルの問題がクローズアップされているが、一戸建て住宅は安全なのか。

 「必ずしも戸建てが安全とはいえない。むしろ戸建ての方が危険な場合がある」と語るのはA氏の部下のB氏。

 B氏が聞いた実例としては、一戸建て住宅の建て売りの場合、建築確認の中間検査のため自治体職員が現場をチェックし、引き揚げたあと、こっそり五本あるべき柱を二本抜いて三本にしてしまうなどというケースが横行しているのだという。「同時並行でほかの住宅を建てている場合、抜いた柱をそこに流用してしまえばコストが浮く。一方で行政は建築後の完了検査では柱が少ないかどうかなどは分からない。住宅を壊してまで検査して確認することは法が自治体側に求めていないからだ。二階建てとして中間検査を受けておいて実際には中二階を造ってしまう違法な増床もある」

 一戸建て住宅の実際の施工業者は零細工務店がほとんど。「仮に手抜きが発覚して瑕疵(かし)担保責任が発生しても会社を倒産させてまた出直せばいいと考えている」という。

 A、B両氏とも口をそろえるのは、「建築確認申請の民間開放はしない方がよかった」という点だ。「以前は自治体の建築審査関係部署にはがんこな構造専門の技術者がいて、建築主事の手前で必ずそこでいったん書類がストップした。ずいぶん泣かされたが、おかげで瑕疵担保責任が発生するような物件を供給したことは一度もない」(A氏)「専門業者が民間同士というのは一番危ない。審査機関といえども客商売となれば必ず癒着が起きる」(B氏)

 ■一般物件にない第三者適正評価

 今回問題になったような耐震強度偽造を防ぐために何ができるのか。
 投資家から資金を預かり、不動産で運用する東京プロパティアドバイザーズ(本社・東京都)の渡辺完勇(さだお)社長は「ファンド運用物件では当然のように行われている、第三者によるデュー・デリジェンス(適正評価)を、一般の分譲マンションでも徹底的に行うべきだ」と提言する。

 ファンド運用物件の場合、地震による損害は入居者だけでなく、そこに投資した人にも及ぶ。その際、「責任は運用を委託された業者も負うことになる。投資家に欠陥住宅を紹介する危険を避けるため、性悪説の立場に立って耐震強度には念入りにならざるを得ない」というわけだ。

 では具体的に何をするのか。
 建物の構造設計書について、図面上で鉄筋の量などを調べるだけでなく、コンピューターに数値をインプットし直して、図面上の耐震強度が本当にあるのかを確認する。さらにエックス線などを使って、図面に書かれている通りに鉄筋が使われているかを現地で実地調査するという。

 この二段の手順を踏むことで、算出されるのが地震予想最大損失率(PML)と呼ばれる数値で、例えば十億円の物件が地震によって受ける被害が三億円と想定されるとPML値は30%になる。渡辺氏によるとPML値が15%を超える物件は、不動産ファンドの対象としては「問題あり」とされるという。

 こうした検査は今のところファンド運用物件に限られており、一般の分譲マンションでは行われていないが、「強度偽装がこれだけ社会問題化した今、消費者が安心して住宅を買うことができるようにするには、一般の分譲マンションなどにも導入すべきだ」と強調する。

 もちろん徹底した検査には時間もコストもかかる。ざっと見積もって約三十世帯が入居するマンションで一カ月−一カ月半、費用にして百五十万−二百万円かかるという。「こうした費用は入居者が分担することになるが、安心を買うと思えば決して高くはない」と渡辺氏は指摘している。

 ここまで、大金を掛けなくても、普通の人が危ない物件を買わないために事前にできる方策はないのか。

 ■瑕疵の補償要求できる業者選ぶ

 前出の不動産コンサルタントA氏は提案する。「できれば経営規模の大きい大手ゼネコン、デベロッパーが建てた物件の方が、もし瑕疵が発覚しても補償を要求しやすい。ヒューザーみたいな零細デベロッパーではダメ」

 一方、部下のB氏は誰にでもできる手法として、消費者にこう呼び掛ける。「戸建てなら設計図書を建築前に買い主に渡せるぐらい自信のある業者ならば信頼できる。設計図書を第三者の建築士に見てもらったり、自分で建築現場を見に行くなどやっぱりある程度足で稼がないといけない。基本的には安いものには安いなりの原因があると考えるべきだ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20051207/mng_____tokuho__000.shtml