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2005年11月19日(土) 00時00分

耐震偽造90棟!?あの建築士5年間手掛けた物件ZAKZAK

「近くにある」恐怖…発覚21棟以外にも

 【90棟】

 国土交通省の調べだと、これまでに構造設計の偽造が疑われる建物は計21棟。同省は19日までに、建築基準法に違反したとして、姉歯氏の建築士資格を取り消す方針を固めた。

 だが、姉歯氏が最近の5年間で設計に関与していた建物は、先の21棟以外にも、マンションなど計90件に及んでいることが明らかになっている。同省は、こうした物件についても、偽造の有無を慎重に調べているが、姉歯氏の資格を取り消しても、時すでに遅しの感がある。

 【6000万円】

 偽装と分かった完成済みの分譲マンションに住む住民には、「倒壊危機」という深刻な恐怖が直面している。

 多摩川を望む川崎市川崎区のマンションは、京急大師線東門前駅から徒歩4分の好位置にある。竣工は平成15年9月で、入居が始まったのは昨年10月29日。中心価格帯は4500万円台で、9階建てに23世帯が住む。注目エリアだったが、虚偽設計で暗転した。

 6000万円の4LDK(150平方メートル)に住む主婦(32)は「2歳、1歳、0歳と3人の子供の将来を考え、いろいろな物件を見て歩いて、ここに決めた。間取りに合わせた家具も揃えて、ようやく落ち着いてきたのに…」と唇をかんだ。

 産業医の夫(42)は17日夜、告知の紙を見て「『ここなのか』と信じられない気持ちになった」といい、「耐震工事や建て替えなど早急に補償をしてもらいたい。簡単に引っ越し先は見つからない。子供を家において仕事をするのは不安だ」と訴える。

 【ローン10年】

 やはり川崎区のマンションに住む会社員(51)は「でき上がったものを信用して買っているのに、今、言われても」と戸惑いを隠せない。自宅は100平方メートルの3LDK(約4000万円)で「まだローンも10年以上残っている」という。

 会社員は「国が先に発表するなんて順番が違う。施工主や販売会社はおかしいと思わなかったのか。こんなことがあっていいのか」と不信感を爆発させ、「言いたいことは言っていく。売主は全面的に補償する義務があるはずだ。近くに同じ規模のマンションをもうひとつ建ててほしい」と怒り心頭だった。

 【頭の中は真っ白】

 横浜市鶴見区にある10階建ての分譲マンションは今年8月に入居が始まったばかり。JR鶴見線弁天橋駅から徒歩5分と交通の便はよく、19戸は完売。「4LDKで150平方メートルぐらい。広さが魅力で購入した」という50代の主婦は「子供が大きくなって『自分の部屋を持ちたい』っていうからローンを組んだ」

 購入価格は約5000万円で、「頭の中が真っ白よ。8月下旬に入ったばっかり。どうすればいいの。教えてよ」と記者に“逆取材”するほど困惑していた。

 【首相を訴える】

 鶴見区のマンション入り口で、不安そうな表情をする老夫婦は「娘が住んでいる。心配で北海道の十勝から飛んできた。小学生の孫3人がドタバタするので買い換えたのに、今度は地震ですぐにつぶれてダメになる」と肩を落とした。

 住民の主婦(40)は「申し分ないマンションだった。今も気に入っている。できるなら、分譲会社がもう一度この場所にちゃんとしたマンションを作り直してほしい」と訴える。

 別の主婦(37)は「子供が転校したばかり。避難するといっても簡単に出ていけない。ローンも組んだばかり。国の責任じゃないか。小泉首相に訴えたい」と憤る。

 【紛糾の説明会】

 横浜市は18日夜、マンション住民を対象に説明会を開いた。集まった住民は約30人。

 同市の調べだと、耐震性は本来の設計の半分しかないという。説明を聞いた住民の男性は「この前、震度3でもかなり揺れたが、免震構造で揺れる設計になっていると思っていた。こんな危険なマンションで今夜も過ごさなければならない」と不満をぶちまける。

 同市側は「ひび割れなどがある世帯は申し出てください」と呼びかけたが、申し出はなく、今のところ目立った被害は出ていない。

 だが、「市に責任があるのではないか」という住民側と「建築確認は民間の検査機関がやった。検査機関の指定は国と県の仕事」という同市側の主張が拮抗し、2時間の話し合いも水掛け論で終わった

 同市は「仮住まいとして市営住宅を提供する」とするが、「一番広い市営住宅でも70平方メートル程度」(関係者)と現状より窮屈な生活を強いられる。

 【眠れぬ日々】

 住民の悲痛な叫びをよそに、関係者たちは、早くも責任のなすりあいを始めている。

 姉歯氏は17日、入居者からの損害賠償請求の可能性について聞かれると、「私だけでは背負いきれないし、私だけの責任ではない。指定確認検査機関や国を相手にしない限り、お金を出せないと思う」と強調した。

 偽造を見抜けなかった検査機関のイーホームズ社の藤田東吾社長も「過失はなかった。住民の方には気の毒だが、適切な業務を行った」「あくまで(姉歯氏の)個人犯罪」と繰り返した。

 民間の検査機関をチェック、指導する立場の国土交通省も「基本的には民間同士の問題」とし、住民への公的助成は行わない方針だ。

 これに対し、東京都の石原慎太郎知事は17日、「国の責任」と断言。ただ、転居を希望するマンション住民については「災害と違い、無条件で都営住宅に入れるわけにはいかない」としている。

 偽造物件21棟のうち完成済みの13棟に住む471世帯。そして、姉歯氏がかかわった疑惑の90棟に暮らす住民たちの眠れぬ日々が続く。

ZAKZAK 2005/11/19

http://www.zakzak.co.jp/top/2005_11/t2005111901.html