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2005年11月19日(土) 00時00分

【関連】“経済設計”そのカラクリ 複数計算書組み合わせ 東京新聞

 首都圏のマンションなど二十一棟の建築確認に偽造した構造計算書が使われた問題で、姉歯(あねは)秀次一級建築士(48)=千葉県市川市=は、国土交通相認定の計算プログラムを使って複数の計算書を作成、部分的に組み合わせる方法でつじつまを合わせて偽造を繰り返していたことが十九日、国土交通省などの調査で分かった。 

 偽造計算書は途中の計算過程に食い違いが生じるため、精査すればチェックは可能だったが、指定確認検査機関イーホームズ(東京都新宿区)は、独自の判断で計算過程の検査を省略。建築確認検査で不正を見抜けなかったという。

 国交省によると、構造計算書は通常、国交相認定の計算プログラムで作成される。地震発生時に水平方向にかかる圧力や鉄筋の本数、太さなどさまざまなデータを入力し、建築基準を満たせば「適合」のメッセージが表示される。

 姉歯建築士は、地震発生時にかかる力を正確に入力し、建物の設計が耐震基準に適合していないとの結論が出た計算書を作成。一方で、地震の際に加わる力を実際より少なく想定した数値を入力して「適合」との結果を表示させた虚偽の計算書を用意した。

 この二つを組み合わせて、正確な力で「適合」したかのように見せ掛けた計算書を偽造していたという。

 建築確認は限られた日数で大量の検査を行うため、必要書類がそろっている場合は、計算過程の検査を省略することが認められているという。

 姉歯建築士の偽造計算書を見逃したイーホームズは、必要書類がそろっていなかったのに、独自の判断で計算過程の検査を省略。内部監査で詳細に再検査するまで偽造に気付かなかった。

■認定プログラム使用が盲点か

 構造計算書の偽造を見逃した指定確認検査機関「イーホームズ」(東京)は「偽造は巧妙で、通常の検査では発覚しない」と主張している。しかし、国土交通省は適切に検査すれば不正を防げたとみている。

 姉歯建築設計事務所を監督する千葉県建築指導課はこれまで四回、姉歯秀次建築士に事情を聴いた。

 同課によると、姉歯建築士は当初「偽造はすぐばれるかもしれないが、ばれたら書き直せばいい」と軽く考えたものの、実際は発覚しないまま建物が完成したという。

 同課の担当者は「きちんと書類を見れば見落とさないはずだ。国交相認定プログラムを使っていたから頭から信用してしまったのか」と指摘。さらに「構造計算書の偽造や一級建築士が法を守らないことなどあるはずがないという業界の『常識』が、頭にあったのではないか」と話した。

■姉歯建築士 業界で評判

 姉歯秀次一級建築士が、建設コストを抑える“経済設計”のできる建築士として、首都圏の建設業界で知られる存在だったことが十九日、関係者の話で分かった。

 関係者によると、同建築士が偽造を始めたきっかけは、数年前に東京都内のマンション業者から受注した物件の構造計算だった。コンピューターソフトへの入力数値を改ざんし、鉄筋の本数を抑えるなど建設コストを圧縮したところ、このマンション業者から次の受注も得られた。ほかの業者の受注に対しても、同じ手法で計算書の偽造を繰り返していったという。

 関係者は「中規模マンションでは、数千万円単位のコスト削減効果があったのではないか。経済設計のできる『有能な建築士』とみられていたようだ」と話している。

 これに対し、姉歯建築士は「仕事のスピードを上げるのが、動機のメーンだった」と強調する一方、「(コスト圧縮による)仕事の増加は多少あった」とも認めている。

    ◇

 一級建築士は全国で約三十一万七千人。日本建築士会連合会によると、年間四、五千人ペースで資格者が増え、一人当たりの仕事は大都市のマンション建設を除けば年々減り続けているという。

 欠陥住宅をなくす運動を続けているNPO「建築Gメン」のメンバー丹羽稔さん=奈良市=は「『建設費用を抑えるような構造計算書を作成する』と評判が立てば、仕事が増えると思ったのではないか」とみる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20051119/eve_____sya_____003.shtml