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2005年11月02日(水) 00時00分

東証システム障害 急いだ能力増強裏目 東京新聞

 十一月相場を迎えた一日。東京証券取引所で前代未聞のシステム障害が発生した。バックアップ機能も役に立たないまま、半日以上取引不能に陥ったのは二千五百二十銘柄。バブル期をしのぐ活況相場の裏で、東京株式市場が抱えるもろさが浮き彫りになった。 (経済部・松本観史)

■原因

 システム障害の直接の原因は、先月八日から十日にかけて行われた処理能力の増強だ。ネット取引などによる注文件数の急増に対応するため、来年二月の実施予定を前倒しする形で、一日当たりの注文処理能力を六百二十万件から七百五十万件に高めた。同時に会員証券会社のコードを認識するプログラムの保管場所を変更した。

 東証は毎月末に、コンピューターに余裕を持たせるためデータを圧縮する。この際、保管場所がさらに移動してしまった。これに対応するプログラムは設定されておらず、どの証券会社から注文が出ているのかといったデータが読み取れなかったらしい。

 記者会見した天野富夫常務は「データの位置が移動することはめったにないが、移動先が見つからなかったことは事実。ソフト上の不備だと思う」と説明した。

■責任

 障害の発生を受け、インドに出張中の鶴島琢夫社長は二日に急きょ帰国、今後の対応を協議する。その際の焦点は、システムを管理する富士通が、保管場所の移動に対応してプログラムを読み込めるシステムを構築していたかどうかだ。

 同社IR室は「システムが実際にトラブルを起こして損害が出ており、謝罪しなければいけないと考えている。契約を確認したうえで東証と交渉したい」と話す。

 一方の東証もシステムの能力増強の際、月末ごとのデータ圧縮に伴う影響を十分テストしたかどうか疑問だ。各証券会社との取り決めで、東証に重大あるいは故意の過失がない限り損害賠償義務は生じないが、システム増強を急ぐあまり入念なテストを怠った疑いは残る。

 今年に入って三回のシステム障害を起こした新興市場のジャスダックは九月末、筒井高志社長の役員報酬30%返上(三カ月)に加えて、担当の専務取締役と常務取締役を、それぞれ常務と取締役に降格させる処分を発表した。

 国内株式売買の九割以上を占める“ガリバー”東証のシステム障害の影響は、同じシステムを使う札幌、福岡両取引所の売買が停止するなどけた違い。関係者の責任は重い。

■対策

 東証はシステムのハード面では、一号機に不具合が起きればただちに二号機が代わりをつとめる仕組みを採用している。ところが、ソフトに問題があれば、バックアップは機能しない。異なるパソコンを使ってもソフトに欠陥があれば同じトラブルが起きるのと同じだからだ。

 野村資本市場研究所の大崎貞和研究主幹は「証券取引所の危機管理は地震などを想定し、ハード面の対策が中心。ソフト面の不具合はバックアップが何台あっても役に立たない」と強調する。

 東証は悲願である自社の株式上場を目指し、上場審査など自主規制機能の在り方をめぐって金融庁とせめぎ合いを続けている。だが、それは安定したシステムの維持という大前提があってこそだ。

 与謝野馨金融相はシステム障害に不快感を表明。金融庁の幹部も「信用を失った今、上場よりも先にやるべきことがある」と強く批判しており、東証の上場計画に今後影響が及ぶ可能性もある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20051102/mng_____kakushin000.shtml