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2005年11月01日(火) 00時00分

牛肉輸入再開 『前提条件』を忘れるな 東京新聞

 食品安全委員会の調査会が北米産牛肉の安全性に関する答申をまとめたことで、輸入再開の判断は農水、厚労両省に委ねられる。両省は米国などが安全対策を順守するよう十分に査察すべきだ。

 三十一日の食品安全委プリオン専門調査会で、ふだん寡黙の委員が、答申の結論に厳しい注文をつけた。

 国産牛に比べて北米産牛肉の安全性に関するデータは質、量とも不十分であるということを明確に書き込むべきだ、と。

 この言葉は、北米産牛肉について議論、消費者が抱いてきた不安の核心を突いたものといえよう。

 答申は、日本と北米の牛肉が牛海綿状脳症(BSE)の病原体である異常プリオンに感染している「リスクの差は非常に小さい」と結論づけているが、前提条件がある。

 それは、日本に輸出する牛肉は月齢二十カ月以下に限定したうえ、脳や脊髄(せきずい)など「特定危険部位」(SRM)を完全に除去することである。

 わが国は、二〇〇一年十月から月齢にかかわらずすべての牛について異常プリオンの有無を調べる全頭検査を行ってきた。答申の前提条件は、北米産には欠けている、こうした実証的なデータの集積・分析を根拠に求めたものだ。

 言いかえれば、前提条件が順守されない限り「リスクの差は非常に小さい」とはいえないということだ。

 農水、厚労両省は国民に対して「リスクの差」が小さいことばかりを強調せずに、前提条件があることを繰り返し説明する必要がある。

 というのは、わが国では生産から小売りまでの履歴を一頭ごと把握するシステムが普及し、ほぼ完全に月齢が把握できるのに対して、北米は不徹底だ。SRMの除去はわが国では全頭が対象だが、米国では月齢三十カ月以上と先進国で最も緩い。

 日本向け牛肉について前提条件をどう順守させるか。昨年十月の日米協議で、輸入再開の場合、両国は「相手国施設の定期的な査察に協力する」ことに合意している。

 北米からの牛肉の輸入を中断する前、例えば日本向け牛肉を生産していた米国の施設は四十カ所にのぼる。もしこれら施設が日本への輸出を再開する場合、具体的にどう査察するのか。両省は輸入再開を決める前に、それを消費者に十分に説明する責任がある。

 でないと「はじめに輸入再開ありき」との批判を免れられない。

 月齢が不正確、SRM除去が不十分など前提条件が守られない場合、「輸入を停止することも必要」と答申が述べているように、食の安全確保を優先しなければならない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20051101/col_____sha_____003.shtml