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2005年09月29日(木) 00時00分

ホームレス 大半が多重債務者 東京新聞

 ホームレスの人たちは全国で約三万人ともいわれる。その大半が消費者金融会社や信販会社などへの返済に行き詰まった多重債務者であることが、支援者や弁護士らの調べで明らかになってきた。支援者らは「多重債務者を減らすことがホームレスを減らすことにつながる」と、政府や自治体などに多重債務者対策の強化を訴える。名古屋市の委託を受けてホームレス自立支援事業をしている同市中村区の施設「笹島寮」の事例をもとに、多重債務との関係を追った。

  (白井 康彦)

 「多重債務問題の取り組みなくしてホームレス問題の改善、解決はない」−笹島寮の生活指導員、野崎真直さんが力を込めて訴えた。今月二十四日に名古屋市内で開かれた「行政の多重債務者対策を充実させるシンポジウムin名古屋」。ホームレスの中には多重債務者の割合がきわめて高いのだという。

 笹島寮は、生活保護の受給者の更生施設で、社会福祉法人「芳龍福祉会」が運営。昨年四月からホームレス自立支援事業を始め、居室や食事を提供して入所者が就職できるよう支援している。入所期間は原則六カ月以内で、定員は七十二人。

 事業開始当時から、入所者の債務の状況を調べている。借金を放置したままでは、就職できてアパートに転居しても、消費者金融会社からの取り立てに遭って再びホームレス状態に転落する可能性が大きいからだ。

 多重債務チェックは、同種の施設でもノウハウがほとんどないため、多重債務者の救済活動をするNPO法人「クレサラ救済センター」に指導を受けた。入所者と施設職員が個人信用情報機関に足を運んで、「何社から、どれぐらいの借金があるか」など入所時の個人信用情報を開示してもらう形だ。

 入所時の面接では、借金のことを正直に言わない人も多く、自己申告では多重債務者は入所者の35%にとどまる。しかし、個人信用情報チェックを取り入れた結果、実際には70%強が多重債務者だと把握できた。

 借金の解決に向けたアドバイスも行っている。返済の催促が五年以上ない場合は「時効」を主張すれば債務は帳消しにできる。こうしたケースが半分ほどあるという。時効が成立しておらず、借金残高が大きい場合には自己破産の申し立てをするよう指導する。

 笹島寮は、今後も借金問題についてのノウハウを蓄積していく考え。多重債務者の救済活動を展開している市民団体「愛知かきつばたの会」と情報交換などの協力関係を結ぶべく模索中だ。

 野崎さんは、笹島寮の取り組みを踏まえてシンポジウムで次の三点などを訴えた。

 <1>多重債務者になることを予防するために行政レベルで広範、多様な啓発活動が必要

 <2>ホームレスに対し、適切で安価な相談事業を拡大すべきだ

 <3>貸出上限金利や貸出金額の制限など法律改正が必要

 東京や大阪、名古屋などの大都市部では、三年ほど前から弁護士や司法書士がホームレスの人たちを対象にした法律相談をしばしば行うようになった。相談内容で圧倒的に多いのが、多重債務。ホームレスに転落する原因は、失業や病気などが多いが、多重債務が絡んでいることが多いことが鮮明になってきた。笹島寮の入所者調査はこうした見方を裏づけた。

 今後は、ホームレス問題に悩む大都市が多重債務者対策にどう手を打っていくかが焦点になりそうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050929/ftu_____kur_____001.shtml