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2005年09月21日(水) 03時06分

<NHK>「新生プラン」発表 背水の陣、課題なお毎日新聞

 「組織や業務の大幅な改革、スリム化を推進する」。20日発表されたNHKの新生プランは、視聴者の大きな批判を受けての再建の骨子となるものだ。全世帯の3分の1に迫る不払い対策として民事手続きによる強制徴収を初めて打ち出したほか、人員削減による収支への効果なども会見で明らかにされた。しかし、督促の時期や対象世帯の絞り込みなど具体的方法は先送りされるなど、改革の行く手にはなお課題が残る。【NHK問題取材班】
 「放送の質の確保を図りながらも、来年度からの3年間で全職員の約1割にあたる1200人を削減する」。新生プランがうたう組織の改革・スリム化には、放送の質の高さを維持できるかどうかの問題は避けて通れない。NHKは、番組制作の外部委託を増やすなどして経費削減を図るとともに、人員削減は、定年退職による自然減と採用抑制、関連会社への転籍や出向によって実現を目指す、と説明する。
 会見では、リストラによる人員削減を打ち出す企業を引き合いに、記者から「甘いと言われかねないのでは」との指摘も出た。これに対し、橋本元一会長は「放送局で(民間企業のように)底を絞るような合理化リストラをすれば、知的生産物を生み出す本来の役目を損ねてしまう」と説明した。
 NHKの人員削減案について、服部孝章・立教大教授(メディア法)は「NHKのチャンネルの多さを見ると、現状でも人数は相当厳しい」と指摘。そのうえで、「職員を1200人も削減して、番組の質が落ちないといえるのか」と疑問を呈する。
 一方、元NHKディレクターで脚本家の滝大作さんは「私がいたころは20代でもディレクターをしていたが、今は50歳代の人数が多い。人員削減は、かえって30、40代にチャンスを与える意味ではよい傾向ではないか。全職員の1割の削減といっても、番組の質には特に影響しないだろう」とプランを評価する。
 受信料の不払いに対する督促導入の最大の理由は「受信料の公平負担」だ。ただ、督促手続きには最低でも1件当たり250円の費用(切手代除く)がかかるため、すべての不払いに支払い督促をかけるのは「財政的に困難」(NHK幹部)な状況だ。
 そこで、どこまでを督促対象とするかの「線引き」が必要となる。会見で、橋本元一会長も「一斉にやれるとは考えていない。(受信料の必要性を)説明し尽くしてから」と述べるにとどまり、督促対象者への具体的な言及はなかった。
 また、督促手続きは受信料契約を結んでいるのが前提で、約958万世帯に上るとされる未契約者の場合は別だ。新生プランは未契約者も法的措置の対象としており、NHKは、放送法違反を理由に受信契約の締結を求める民事訴訟を検討している。
 この場合、提訴の際に未契約者がテレビを持っているかどうかを証明しなくてはならないが、「調査権限がないのに室内に踏み込めない」(NHK幹部)のが現状で、実施を困難視する声も出ている。
 岡村黎明・元大東文化大教授(国際メディア論)は「不払いよりはるかに多い未契約者への具体的な対策が明確でない以上、不公平感は結果的に拡大する」と懸念を示している。
 ◇差し押さえも可能に 支払い督促手続き
 支払い督促の手続きはどのように行われるのか。督促は、まずNHKが、不払い世帯や事業所のある地域の簡裁に申し立てて始まる。簡裁の督促を受けた視聴者側は、2週間以内に異議を申し立てることが可能だ。その場合は正式な民事裁判になり、判決などの形で、視聴者側が支払うべきかどうかが決まる。
 一方、視聴者側から異議の申し立てがなければ、NHKは簡裁に、財産の差し押さえなどを行う「仮執行宣言」を出すよう申し立てできる。申し立てにより簡裁は直ちに仮執行を宣言。差し押さえなどの手続きに入る。この場合も、宣言が出て2週間以内なら視聴者側は異議を申し立てることが可能で、その場合は正式な裁判に移る。その際、仮執行宣言の停止手続きを取らないと差し押さえなどの手続きは継続される。
 なお、督促手続きを行うために必要な費用(切手代除く)は、滞納額5万円までは1件250円。10万円で500円、さらに10万円ごとに500円ずつ加算される。
 ◇「何人の圧力も拒否」明記
 新生プランには、「公共放送の使命」との項中で、「何人からの圧力や働きかけにも左右されることなく、放送の自主自律を貫く」との文言も盛り込まれた。旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げた特集番組をめぐり、朝日新聞が1月に「政治家の圧力によって番組内容が改変された」と報道し、政治家との関係がクローズアップされたことを受けての配慮ともみられる表現だ。
 この問題に対しては、今年6月に、番組制作の職員有志が、▽政治家と距離を置き、放送の独立を確保する▽個別番組の内容に関して、政治家への説明は行わない——との表現を「NHK倫理・行動憲章」に盛り込むことをNHK側に求める提言を行っている。
 会見で、橋本会長は「政治圧力によって(報道内容を)変えていない。圧力に屈しないといくら説明しても疑いを持たれてしまった。重く受け止める」としながらも、「(新生プランは)結果的に若手有志の声に応えたといえば応えたものだ。思いは同じだ」と語った。
 NHKのOBの蓑葉信弘・日本女子大非常勤講師(マスメディア論)は「BBC(英国放送協会)は、鋭く政府と対立してきたことから視聴者の信頼度が高い公共放送として知られている」と指摘。そのうえで「『放送の自主自律を貫く』と立派なことを書いているが、実際にどう貫くかの具体策や、過去の疑惑への説明がないことが不満だ。これでは、視聴者の信頼をつなぎとめておくことは難しい」と話した。
(毎日新聞) - 9月21日3時6分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050921-00000012-mai-soci