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2005年08月18日(木) 00時00分

先物業者への行政処分 ぐんと厳しく 長期の業務停止、警察へ告発… 東京新聞

 先物取引大手のグローバリー(本社名古屋)が今月五日、主力の先物取引業務から撤退したニュースは、大きな話題を呼んだ。顧客との間でトラブルが頻発していた同社を撤退に追い込んだのは、経済産業省や農林水産省の厳しい姿勢。二度にわたる業務一部停止の行政処分や告発が、企業の信用を失墜させた。しかし、顧客とのトラブルは同社だけの話ではない。商品先物業界が抱える問題をどう改善していけばいいのか。 (白井 康彦)

 グローバリー撤退のニュースは、消費者問題に携わる弁護士たちも驚きを持って受け止めた。

 「びっくりした。行政が問題業者をここまで追い込んだということで大歓迎。行政の厳しい姿勢に業者らは神経をとがらせている」と話すのは、横浜弁護士会の石戸谷豊弁護士。

 同社のトラブルは、顧客が取引を終えたいと申し出ても同社側が受け入れず、顧客が損失を膨らませるというパターンが多かった。虚偽の帳簿を作ったり、監督官庁へのトラブルの報告を怠るなどの問題もあった。

 経産省、農水省は昨年十一月から約四カ月間にわたって行った同社への検査でこうした問題点を把握。九十三営業日にわたる受託業務の停止を命令しただけではなく、取引業者に関する許可の更新をせずに棚上げ状態を続けた。同社側は業務再開のめどが立たなかったのだ。

 さらに、商品取引所法違反の疑いがあるとして愛知県警へ告発。県警は今年七月、同社の本社や支社などを家宅捜索し、顧客の契約打ち切り、従業員の退職も相次いだ。

 同社に損害賠償を求めて係争中の千葉県の会社員Aさん(33)も「これまで取り締まりが手ぬるいといわれてきた行政がここまでやってくれるとは…。撤退を聞いてしばらく信じられなくて、ぼーっとした」と振り返る。

 両省は今年五月、不当な営業行為が多かったとして西友商事(本社東京)に対して七十二営業日にわたる受託業務の停止を命じた。従来の行政処分では、業務停止期間は二週間以内のケースがほとんどで、それに比べ姿勢の厳しさが際だった。

 業界関係者も「今後、検査の中で行政が法律違反の営業を見つけたら、告発されてしまうことがありうる。ショックだ」と事態を深刻に受け止めている。

 厳しい姿勢を象徴するのが、検査体制の強化。行政処分は、両省が業者を検査して法律違反行為をみつけて実施するが、経産省は商務課の検査官の定員を本年度に十五人増やした。今年四月には商務課内に検査室も設置している。

 今年五月に施行された改正商品取引所法では、投資家保護の規定が格段に強化された。先物業界誌「先物経済界」の藤野洵主幹は「法改正と行政の取り締まり強化で、先物業者と顧客とのトラブルはかなり減るだろう」と予想する。

 ただ、弁護士らの間には「業界の異端児のような存在だったので、グローバリーには厳しい姿勢を貫きやすかったのではないか。業界主流の業者にも同じような姿勢を見せてほしい」といった意見もある。

 先物業者の強引な勧誘で大損した投資家は業者に抗議し、場合によっては損害賠償を求めて裁判を起こす。Aさんはそれだけでは不十分と強調する。「被害者は失敗したことを恥じているだけでは、悪質業者が別の人をカモにしてしまう。被害者を増やさないようにするためには、行政処分も申し立てて業者の姿勢を改めさせるべきだ」

 Aさんは、グローバリーの営業マンとの電話による会話を録音し、それを行政に持ち込んだ経験者だ。

 改正商品取引所法は、取引しないと意思表示した人への勧誘を禁じた。消費者はこのルールを積極的に生かせる。繰り返ししつこく勧誘してくる業者について経産省や農水省に連絡すればいい。

 トラブルに見舞われた際は、消費生活センターや日本商品先物協会に相談する選択肢もある。業界関係者らによると、こうした機関への苦情が多い業者については、その情報が経産省や農水省に伝わり、行政処分を受ける可能性が高まる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050818/ftu_____kur_____001.shtml