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2005年08月11日(木) 00時00分

生命保険金の不払い問題 東京新聞

 明治安田生命が金融庁から業務の一部停止命令を受けた騒ぎ(メモ参照)で、クローズアップされたのが「告知義務」の問題。生命保険に入ろうとする人は、保険会社に自分の病歴などを告げなければならないが、外交員が契約を得るために告知義務を説明しなかったり、偽りの記述を勧めるなどして、支払い段階でトラブルにつながることも多いようだ。生保業界側は改善に動き始めたが、消費者団体や消費生活相談員などには「不十分」という声が高い。

  (白井 康彦)

 東海地方に住むAさん(54)は大手生保会社・B社の保険に入っていたが昨年秋、下取りして同社の別の保険に入り直した。いわゆる「転換」だ。

 Aさんの人間ドックの検査結果には、狭心症や腎臓結石などの既往歴が書かれており、転換に関する告知手続きではこの書類を使えばよかった。が、外交員の女性はAさんに病院に行くように勧め、医師の問診にはすべて「いいえ」と答えるようにアドバイスした。

 Aさんは外交員の言う通りにしたが、生命保険に詳しい知人に話したところ、Aさんの行為は告知義務違反をした形になり、保険金がもらえるはずの場面で、保険金の支払いを拒否される恐れがあることがわかった。

 Aさんは「元の契約に戻してほしい」と要請したが拒否され、納得できずに同社の営業所や支社相談室に抗議。社長にも手紙を出し、消費生活センターや生命保険協会、新聞社にも相談した。

 半年以上すぎた今春、B社は「転換の契約成立前に約款を渡すのを怠っていた」という理由で、元の契約に戻す手続きをした。それでもAさんは「B社は告知義務違反に関する外交員の“そそのかし行為”を認めない」と不満を抱いている。

    × ×

 告知の制度には▽契約者自身が告知書に記入する▽医師の問診を受ける−などの方法がある。「病歴隠し」は、いざという時に告知義務違反に問われ保険金が降りないことがあるが、告知義務の重要性を知っている消費者が少ないうえ、契約獲得のためにルールを軽視する外交員も多く、トラブルは絶えない。

 国民生活センターや各地の消費生活センターに寄せられた告知義務に関する相談・苦情は二〇〇〇年度の百五十三件から増え続け〇四年度には二百九十一件になった。「苦情の対象は明治安田生命だけではない」と同センター。

 生命保険協会は六月三十日に「正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン」を発表した。(1)告知の重要性の周知を強める(2)分かりやすい告知書を作る(3)外交員に対する教育を強める−といった内容だ。

 今月三日には全国消費者団体連絡会が東京都内で告知義務についての学習会を開き、協会の担当者がガイドラインについて説明したが、参加者からは厳しい質問・要望が相次いだ。

 告知義務違反をめぐるトラブルでよくあるのは、生保会社が非を認めず消費者が泣き寝入りに終わるパターン。消費生活相談員の女性は「消費者と生保会社の力の差を前提に対応してほしい」と強調した。

 また、大学講師の女性は「医学の素人同士の外交員と客が話し合って、この保険がいいとか、この特約を付けようとかなるのに、保険金が払われる段階になると医学的にきっちり審査される。何かおかしい」と訴えた。

 <メモ>明治安田生命に対する行政処分

 金融庁が今年二月、団体保険・団体年金保険を除く保険契約の締結や保険募集を二週間にわたって停止するよう命じた。金融庁は、本来は問題とならないようなケースでも告知義務違反を根拠にして死亡保険金を払わなかった事例が多くあった、と説明。顧客に対して不告知をそそのかした事例があったことも指摘している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050811/ftu_____kur_____001.shtml