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2005年08月02日(火) 00時00分

中古家電 解体より再使用 持ち込まれた中古家電はその場で査定を受ける 東京新聞

 「いらないテレビを無料で回収しまーす」。拡声器でこんな呼びかけをしながら、住宅地を回る軽トラックが、最近よく目につく。「家電リサイクル法」で、消費者が小売店を通じて不要となったテレビなどを処分することが有料となったことで、こうした無料回収業者が急増しているのだ。大量生産・大量廃棄が当たり前のニッポンで、まだまだ使える製品でも解体に回す制度の矛盾を背景にジワジワ成長する業界の事情を探った。

 年間二百万台の中古家電を買い取り、販売する「浜屋」(埼玉県東松山市)には、テレビやエアコン、冷蔵庫、ラジカセなど中古家電を満載したトラックが、早朝から続々と詰めかける。

 「まだまだ新品同様で“もったいない”。こんなもの捨てるのは、世界中で日本人だけだ」(浜屋の小林茂社長)

 家電の行き先は、東南アジアや中南米、中東、アフリカ…。扱う品の約三分の一がテレビだが、意外な人気商品は二十−三十年前に大流行した全長一メートル前後の大型ラジカセ。「頑丈でつくりが単純だから、修理が簡単」なことが好評だ。

 小林さんは「日本メーカーの製品への信頼度は抜群だが、求められているのは高機能でなく、“ロングライフ(長持ち)”」と話す。大型のコンテナに、ラジカセなど音響製品を詰め込んでいたアフガニスタンのバイヤーは「この量ならいつも二時間で売り切れ」と、その人気ぶりを語る。

 浜屋を訪れる収集業者は、街中の電器店が主な仕入れ先だった。ところが、家電リサイクル法施行で、小売店には回収した家電品をメーカーに引き渡す義務が生まれた。それで「苦肉の策として家庭を直接回る」業者が増えた。浜屋も、同法施行の年は入荷が三割も減った。そこで、同法の回収指定品以外の家電を収集する自治体や、顧客サービスで家電を無料で引き取る量販店への営業を強化して対応している。

 一方、関係業界で組織する「家電製品協会」(東京・虎ノ門)は「法律の趣旨は順調に達成されている」と誇る。二〇〇四年度の指定四品目の回収台数は、〇一年度の八百五十五万台から千百二十一万台に増加。再資源化率もテレビ、エアコンで80%を超えた。

 しかしこれは、壊れた製品も使える製品も選別せず、リサイクル工場で解体した成果だ。小林さんは「リサイクル(再資源化)よりも、リユース(再使用)を進めた方が環境への負荷は小さい。メーカーの論理に乗せられ、問題の解決になっていない」と話す。

 批判に対して、経済産業省情報通信機器課は「リユースの重要性は認識しているが、(中古家電)業界の全体像が見えないのが問題」と指摘する。また、消費者からリサイクル料金を受け取りながら、輸出用に横流ししたり、商品にならない中古家電を不法投棄するなど悪徳業者による事件も相次ぎ、中古業界のマイナスイメージの払しょくも課題だ。輸出先でのごみの最終処理をどうするかという問題もある。

 小林さんは、仲間とNPO法人「家電リユース協議会」を設立。組合づくりも呼びかけているが「業者数は推定約五十万」(家電製品協会)ともされるなかで、道は険しい。

 リユースをどう制度で位置づけるか−。五年に一度の同法見直し時期が迫り、焦点の一つであることは間違いない。検討が進めば、購買欲をあおるばかりのメーカーの姿勢も問われるだろう。

 しばしば市場調査で海外を訪問する小林さんは「うちの買い取り基準にない古い製品が、当たり前のようにデパートに並んでいた」欧州での風景が忘れられない。

 文・浅田晃弘/写真・戸上航一

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