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2005年07月15日(金) 03時02分

図書独断廃棄 著作者の利益侵害 最高裁差し戻し「つくる会」逆転勝訴産経新聞

 千葉県船橋市立西図書館の女性司書が新しい歴史教科書をつくる会のメンバーら保守系知識人の著書を独断で処分したことで「表現の自由などの権利を侵害された」として、同会と作家の井沢元彦さんら七人が船橋市に計二千四百万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は十四日、「廃棄は著者の利益を侵害する」との初判断を示した。
 請求を退けた二審判決は破棄され、審理は東京高裁に差し戻された。つくる会側の、事実上の逆転勝訴。
 横尾裁判長は公立図書館の性格について、「住民に対して思想、意見など種々の資料を提供するための公的な場である」と定義。その上で、「著作者にとっては思想、意見などを公衆に伝達する場であり、独断による書籍の廃棄は著作者の利益を侵害し、国家賠償法上違法になる」と判断した。
 つくる会側は憲法の「良心の自由」や「表現の自由」を根拠に、著者の権利を主張。船橋市は「著者に対しては直接的な権利侵害はない」と反論していた。
 一、二審は、「司書の廃棄処分は違法行為」としたものの、「著者が法的責任を追及することはできない」として、つくる会側の訴えを全面的に退けていた。
 訴訟では当初、司書にも賠償を求めていたが、この部分は上告が受理されず、つくる会側の敗訴が確定している。
 判決などによると、つくる会の活動などに批判的だった司書は平成十三年八月、つくる会や井沢さん、西部邁さん、渡部昇一さんらの書籍百七冊を、廃棄基準に該当しないのに処分した。
 新しい歴史教科書をつくる会の西尾幹二名誉会長の話「著者の人格を守るという、ごく当たり前のことを逃げないで判断し、民主主義のルールを守った最高裁には最大の敬意を表したい」
 船橋市の石毛成昌教育長の話「市の主張が認められず、極めて厳しい判決と受け止めている」
     ◇
 【視点】
 ■図書館の公共性重視に意義
 裁判では、公立図書館と著者の関係をどう考えるかが最大の争点となってきた。これまで図書館では「利用者の権利」は意識されてきたが、著者との関係を規定するものはなかった。
 判決は、著者の側に「図書館にある著作物によって思想、意見などを公衆に伝達する『利益』がある」と初判断。その利益が侵害された今回のケースは「国家賠償法上の違法」になると指摘した。著者にとっては、自分の作品に対する新たな保護領域が広がったという点で、図書館にとっては新たな公的役割を意識させるという点で、それぞれ意味を持つ判決となった。
 また、直接の争点とはならなかったが、判決は司書がした独断的な廃棄行為について「基本的な職務上の義務に反する」と厳しく批判している。幅広い思想や意見を提供することは、公立図書館の当然の役割であると同時に、健全な社会を発展させるためにも必要不可欠だ。船橋市のケースが特異な出来事であったと思うが、広く図書館関係者の戒めとなることを期待したい。(赤堀正卓)
(産経新聞) - 7月15日3時2分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050715-00000002-san-soci