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2005年07月07日(木) 00時00分

「条理」とは物事の筋道、道理をさす。明治八(一八七五)年の… 東京新聞


 「条理」とは物事の筋道、道理をさす。明治八(一八七五)年の太政官(だじょうかん)布告に「民事ノ裁判ニ成文ノ法律ナキモノハ習慣ニ依(よ)リ習慣ナキモノハ条理ヲ推考シテ裁判スヘシ」とあり、現在も有効とされる▼日本に永住帰国した中国残留孤児の八割、二千人が国家賠償を求めて全国十五地裁に起こした訴訟の初めての判決が六日、大阪地裁であったが、孤児らの訴えはすべて退けられた▼その理由として裁判長は孤児らの窮状を「看過できない」と認めながら「国には早期帰国を実現させる条理上の作為義務はあったが、違反とまでは言えず、孤児になったことが国家政策に起因するからといって条理上の自立支援義務を負ったとも言えない」とした▼ここで「条理」は、孤児らの窮状を「国民が等しく受忍しなければならない戦争損害であって国の内と外を問わない」として、平等原則の制約要件に使われた。法がないから条理を求めた原告に、補償は立法、行政の裁量の問題と突き放した▼一連の訴えで大阪は十番目と遅い提訴だったが、一年三カ月のスピード結審に、原告の高齢化への配慮が期待されていた。結果は逆で、これでは「早くあきらめろ」と言わんばかりだ。日本語が十分理解できない傍聴席の原告たちの戸惑いぶりが痛ましかった▼ハンセン病訴訟の熊本地裁判決や中国人強制連行訴訟の東京地裁判決のように、法の不備を「条理」で補う司法の弱者救済の流れが断たれた。肉親との再会を望んで果たせず、戻った祖国に再び見捨てられた孤児らには無残な七夕となった。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20050707/col_____hissen__000.shtml