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2005年07月01日(金) 02時37分

リフォーム詐欺:悪質な手口、行政の対応を検証毎日新聞

 全国で相次ぐ悪質なリフォーム商法で、警視庁は30日、サムニングループの元社員4人を詐欺などの容疑で逮捕した。全国の消費生活センターに寄せられた同グループに対する相談・苦情は306件、被害総額5億9533万円。だが、同グループは5399人から約115億円を売り上げており、警視庁は大半が詐欺商法によるものとみている。ほとんどの被害実態が明るみに出てこなかったのは、なぜか。高齢者や認知症患者を狙うなど同社の悪質な手口や、行政の対応を検証する。【合田月美、須山勉、遠藤和行】

 ◇行政気づかず 苦情埋もれたまま

 特定商取引法に基づき都道府県から改善指示という「行政処分」を受けたリフォーム関連業者は、これまで12業者ある。だが、その中にサムニングループの名前はない。

 同グループと、親会社だったエム・エイチ・エスは、00年11月〜昨年2月に3回、同法などに基づく行政指導を東京都などから受けた。しかし、社名や組織変更を重ねることによって、悪質業者として社名が公表される「行政処分」は免れた。捜査幹部は「社名が公表されていれば、被害拡大はかなり防げたはずだ」とみる。

 「エム・エイチ・エス・インターナショナル」への苦情の多さを受け、都取引指導課が行政指導を検討していた02年2月、同社はサムニングループ3社を設立し、営業部門を移した。翌3月に行政指導は行われたが、組織改編によりエム社への苦情は01年度の38件から02年度7件に減り、行政処分は見送られた。

 昨年2月、同課はサムニンイーストへの苦情の多さに注目するが、エム社と同じグループとは気付かなかった。データベース化された苦情は会社名で検索するため、社名変更に対応できなかった。サムニンイーストは04年11月、さらに社名をリブロに変更する。多くの切実な被害者の苦情が、再び埋もれていった。

 同課の担当者は「問題業者が子会社を作ったり、違う社名に変更した場合、実態把握はかなり難しい。ほかの自治体とも情報交換を密にして監視を強めたい」と話す。

 苦情情報が集まる国民生活センター。逮捕されたり行政処分を受けない限り、基本的に業者名を公表していない。同センター広報室は「消費者の思い違いの可能性もあり、公表が特定業者の営業妨害になる恐れもあるからだ」と説明する。

 経済産業省は特定商取引法に基づきこの10年間で計85件の行政処分をしたが、訪問リフォーム業者は一件もない。「狭い地域の案件」とみて、都道府県に委ねてきたからで、国民生活センターから苦情情報が流れるルートもない。全国規模の被害が明るみに出たことを受け、同省消費経済対策課は「全国的な問題は、経産省としても端緒をつかめるよう取り組みたい」と話す。

 被害拡大を防ぐ情報は、都道府県や国民生活センターの中に埋もれていた。及び腰だった行政に、今回の事件は重い課題を突き付けている。

 ◇上層部の関与が焦点

 「こんなに被害が広がっているとは」。昨年11月、サムニングループの家宅捜索で、警視庁の捜査幹部は契約書類の山に驚いた。消費生活センターへの相談件数などから、被害者は数十人程度とみていたからだ。押収資料は段ボール箱300箱以上。捜査対象の被害者は数千人に膨れ上がり、専従捜査員も数人から一気に40人に増員した。

 被害の確認作業は難航した。「床下など普段目に付かない場所。捜査員の訪問で、やっとインチキ工事に気づく人がほとんどだった」という。

 サムニングループの被害者の6割以上が60歳以上。認知症の人も多い。1人暮らしのお年寄りに優しい言葉をかけ、床下や天井裏に入り込んではほこりだらけになった姿を見せ、信頼を取り付けた。たまに訪れる親族の懸念にも、なかなか被害を認めたがらないお年寄りが多かったという。

 一方で、相手が不審を覚えたと見ると、裏の顔を見せる。複数の営業マンが訪れ、客の前で「このヤロー」と怒鳴りながら担当者に暴行を加え、客を恐れさせて契約させる「ロールプレイング営業」と呼ぶ手口も使った。恐怖は、周囲に被害を相談する道を閉ざすのに有効だったという。

 横浜市に住む1人暮らしの男性(72)の娘は、サムニンイーストの営業マンが父親を銀行まで連れて行き、金を振り込ませたと疑う。父親が振り込み方法を理解していたとは思えないからだ。

 娘が出産後久しぶりに父親宅に行くと、同社の元地域担当部長、鎌田悟容疑者(28)がいた。見知らぬ男。すぐ追い返した。父親の預金通帳の残高はゼロ。同社が03年10月に160万円の床下工事、11月に168万円の中2階改修工事をしていた。グループ業者も含め20枚の契約書が見つかった。父親に何を聞いても「分からない」と答えるばかり。病院に連れて行くと、父親は認知症と診断されたのだ。

 高齢者、認知症の人など弱者を徹底的に食い物にしたリフォーム詐欺。今後は、グループ上層部の関与の有無が捜査の焦点だ。会社幹部らは「無理な勧誘はさせていない」と関与を否定する。販売員に独自に会社を持たせる制度などが上層部の責任追及の壁となるが、警視庁は指示関係の解明を進めている。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050701k0000m040150000c.html