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2005年06月30日(木) 16時40分

福井の預金引き出し事件:知的障害者らの被害防止に、成年後見制度の活用を /福井毎日新聞

 ◇県内で預金引き出し事件
 福井県内に住む知的障害を持つ男性(51)が、何者かに銀行預金など約2140万円を引き出されるなどの被害に遭った事件は、判断力が不十分な人の財産が犯罪の標的にされる実態を浮き彫りにした。救済にあたった司法書士は「知的障害などを持つ人の財産管理は、成年後見制度で後見人などを選び、すぐに契約を取り消せるようにしておくべきだ」と警告する。全国で認知症の高齢者を狙った悪質リフォームなどの被害が相次ぐ中、成年後見制度を中心に対策を探った。【樋口岳大】
 この男性の場合、母が高齢で入院し1人暮らしを始めてから、次々と預金が引き出され、さらに消費者金融の借金を背負わされた。被害に気づいた親族が司法書士に相談、成年後見制度を利用して保佐人の選任を福井家裁に申し立てた。保佐人が消費者金融との契約を取り消し、支払いは免れた。しかし、誰が預金を引き出したかは分からないままだ。
 福井家裁によると、親族や市町村長らによる法定後見の選任申し立ては、県内で04年に97件。司法書士による支援組織「成年後見センター・リーガルサポート」福井県支部長の中尾亨・司法書士は「年々、増加傾向にある」と話す。
 ◇成年後見制度とは
 知的障害や認知症などで判断能力が不十分な人の権利を守るため、財産管理や契約について、後見人などが代理になる制度。00年に介護保険とともに導入された。本人が判断能力のあるうちに契約する「任意後見」と「法定後見」があり、法定後見は、本人に身寄りがない場合、市町村長が申し立てることができる。
 法定後見は、保護の必要性によって▽後見=判断能力が欠けているのが通常▽保佐=判断能力が著しく不十分▽補助=判断能力が不十分——の3段階。後見人は、すべての法律行為(日常生活に関する行為を除く)を代わってしたり、取り消したりできる。また、保佐人は申し立て時に選択した特定法律行為を代わってしたり、金銭の借り入れなど民法で定められた重要な法律行為に同意したり、取り消したりできる。後見人や保佐人に選ばれるのは、親族や司法書士、弁護士など。
 ◇制度の課題
 せっかくの制度だが、利用をためらう人は少なくない。後見人などの選任を受けるための判断力の鑑定費(5万〜15万円程度)や後見人への報酬(月2万5000円〜3万円程度、家裁が決定)が、経済力が弱い利用者にはネックになる。市町村長が申し立てをする場合には、国や自治体による助成制度があるが、適用を受けるには条件があり、04年度の県内の助成は1件しかなかった。
 また、「後見」が適用されると選挙権がなくなる(保佐や補助は残る)ことや第三者に財産管理を任せることに抵抗があったり、後見人を依頼できる人がいないなどのケースもある。
 中尾支部長は「不安がある人は、まず司法書士や弁護士などに相談してほしい」と話す。県司法書士会(0776・30・0001)は、毎週月、水曜に、成年後見制度も含めた無料法律相談を開催。また、リーガルサポート県支部では、司法書士約30人を後見人候補者名簿に登録。後見人を依頼できる人がいない場合に登録者を紹介している。
 ◇社協の制度利用も
 成年後見制度とは別の、社会福祉協議会による「福祉サービス利用援助事業」も認知症や知的・精神障害などで判断能力が不十分な人の財産管理を助ける制度。県内では今年3月末現在で162人が利用している。
 利用者が各地域の社協と契約。社協の「生活支援員」が、本人に代わって▽預貯金の出し入れ▽医療費や公共料金の支払い▽各種福祉サービスの手続き▽定期預金通帳など重要書類の保管——などをする。生活支援員の利用料は高くはなく(1時間以内1000円など)、手続きも比較的簡単。相談は、各地域の社協で受け付けている。

6月30日朝刊
(毎日新聞) - 6月30日16時40分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050630-00000258-mailo-l18